インダストリー4.0では、企業や業界、分野の壁を超えてバリューチェーン全体がネットワークでつながることが求められる。その実現のためには、通信(ネットワーク、プロトコル)、サイバーセキュリティ、データ保護、概念、専門用語、記号などの標準化が業界の垣根を超えて必要となる。同時に、各分野に既に存在する国際標準やコンソーシアムの仕様も考慮しなくてはならない。また、将来的に生じるだろう新たな要件にも柔軟に対応できなくてはならない。
管理シェルはこれらの要求を満たすために必要となるインダストリー4.0実現のためのツールである。プラットフォームインダストリー4.0では管理シェルの利点として「情報を1つにまとめる包括的な枠組み」「異なる企業や業界の橋渡し」「拡張や拡大が可能」「アセットのライフサイクル全段階をカバー」の4つの利点があるとしている。
プラットフォームインダストリー4.0では、管理シェルが満たすべき22件の要件などについても定めている。
管理シェルの技術的な詳細についてはプラットフォームインダストリー4.0において現在開発中だと先述したが、同プラットフォームの作業グループ「AG1」において現在進められている作業は「管理シェルの詳細」と「具体的な管理シェル」という2つのプロジェクトで進められている。
「管理シェルの詳細」プロジェクトでは、これまでに出てきたような、管理シェルの要件や構造、識別子、サブモデル、属性、OPC UA、AutomationML(Automation Markup Language)へのマッピングなどの要素を踏まえ、1つの構造にまとめて実装可能とする取り組みを進めている。
2018年秋以降に「管理シェルの詳細(パート1)バリューチェーン上のパートナー間における情報の交換」とする文献を発表する予定としており、管理シェルに含まれている全情報をパケット(フェイルの束)として、あるパートナーから別のパートナーに伝送するために、どのように情報(データ)を編集、処理、整理すべきかという点を示すことを計画する。
「具体的な管理シェル」プロジェクトでは、ユーザー企業が実際に管理シェルを利用できるようにサブモデルの具体的な内容を定めたり、管理シェルをデモンストレーター(インダストリー4.0のシナリオの具体例)に実装したりすることに取り組んでいる。具体的には、管理シェルとサブモデルの具体的な実装やヘッダの具体化、サブモデル定義の手引策定、自由サブモデルの具体化などに取り組んでいる。
今後は2018年秋以降に新たな文献を発表予定としており、管理シェルに関する実用的なポイントをまとめる計画だという。サブモデルをどのように開発するかの解説や、基礎サブモデルの定義、サブモデルのテンプレートなどを盛り込む予定だとしている。
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