製造業の産業構造を大きく変えるといわれている「第4次産業革命」。本連載では、第4次産業革命で起きていることや、必要となることについて、話題になったトピックなどに応じて解説していきます。第23回となる今回は「ハノーバーメッセ2018に見るインダストリー4.0のフェーズの変化」をテーマに、スマートファクトリー化における中心課題の変化について解説します。
本連載は、「いまさら聞けない第4次産業革命」とし、第4次産業革命で製造業が受ける影響や、捉える方向性などについて、分かりやすくご紹介していきたいと考えています。ただ、単純に解説していくだけでは退屈ですので、架空のメーカー担当者を用意し、具体的なエピソードを通じて、ご紹介します。
※)本連載では「第4次産業革命」と「インダストリー4.0」を、意味として使い分けて表記するつもりです。ドイツ連邦政府が進めるインダストリー4.0はもともと第4次産業革命という意味があります。ただ、本稿では「第4次産業革命」は一般用語として「IoT(モノのインターネット)による製造業の革新」を意味する言葉として使います。一方で「インダストリー4.0」はドイツでの取り組みを指すものとします。
矢面 辰二郎(やおもて たつじろう)
自動車部品や機械用部品を製造する部品メーカー「グーチョキパーツ」の生産技術部長兼IoTビジネス推進室室長。ある日社長から「君、うちも第4次産業革命をやらんといかん」と言われたことから、話が始まる。多少優柔不断。印出研究所に入り浸っている。
印出 鳥代(いんだす とりよ)
ドイツのインダストリー4.0などを中心に第4次産業革命をさまざまな面で研究するドイツ出身の研究者。第4次産業革命についてのさまざまな疑問に答えてくれる。サバサバした性格。
*編集部注:本記事はフィクションです。実在の人物団体などとは一切関係ありません。
第22回:「スマートファクトリー化で進む“モノづくり”の融合」
従業員200人規模の部品メーカー「グーチョキパーツ」の生産技術部長である矢面辰二郎氏はある日、社長から「新聞で読んだけど、君、うちも第4次産業革命をやらんといかん」と言われます。しかし、「第4次産業革命」といわれても「それが何なのか」や「どう自分たちの業務に関係するのか」がさっぱり分かりません。そこで、矢面氏は第4次産業革命研究家の印出鳥代氏に話を聞きに伺うことにしました。
さて前回のおさらいです。スマートファクトリー化で本当に価値を創出するためには、製造部門だけでなく設計部門や企画部門など、部門間の壁を打ち破り、“モノづくり”トータルでの価値創出に取り組む必要があるという話をしました。
単純に工場内の見える化だけであれば、工場内で完結するけれど、その先の効率化などを追求しようとすると、エンジニアリングチェーンを全体で捉えないと難しくなるわね。
製造業のバリューチェーンを考えると、設計などどういうものを作るのかというエンジニアリングチェーンと、部品などモノの動きを示すサプライチェーンが存在し、それぞれの交点として存在するのが「工場=製造現場」となります。生産のスマート化や効率化はこれを考えると、工場だけで実現できることではなく、エンジニアリングチェーンやサプライチェーンを組み合わせて実現していくものでしたね。
製造業のIoT活用や第4次産業革命の動きが、工場のスマート化から進んでいるというのはこうしたバリューチェーンの在り方を見ると決して間違いではないといえます。
さて、今回は2018年4月にドイツのハノーバーで開催された産業技術展「ハノーバーメッセ2018」で見えた、「インダストリー4.0」のフェーズの変化について紹介していきます。
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