そもそも「インダストリー4.0」はハノーバーメッセで発表されたんですよね。その中で環境もいろいろ変わってきたと思いますが、印出さんは今はどういうフェーズだと考えているんですか。
今は第3フェーズに入ったところじゃないかしら。2011〜2013年くらいまでがドイツ内でもさまざまな理想のコンセプトが議論された第1フェーズ、2014〜2016年くらいまでが全体像は確立されたものの具体的にどういうことが行えるかの模索が続いた第2フェーズ。そして第3フェーズは一部で具体的なソリューション提供が始まった時期ね。
これからどんどんソリューションが登場して「インダストリー4.0ビジネス」が生まれてくるんでしょうか。
既にビジネスの形が見えた領域では新たな製品やサービスがどんどん出てくるんじゃないかしら。まだ限られた領域ではあるけれど、製品として収益モデルが見えたものから製品化が進むと見ているわ。
インダストリー4.0のフェーズは2011年に発表があった後、しばらくドイツ国内でもコンセプトを模索する時期が続きました。その当時は、ドイツ企業でも否定的な反応も多かったと聞きます。しかし、新たなテクノロジーの流れを捉えているという点と、ドイツ企業としてグローバルに対してのマーケティングツールとして使えるという点から動きが本格化し、2012年末に発表されたドイツ政府に対する最終報告書で1つのコンセプトが形作られました※)。
※)関連記事:ドイツが描く第4次産業革命「インダストリー4.0」とは?【前編】
2013年からはこの描かれた理想のコンセプトを実現するにはどういう技術や取り組みが必要かが議論され、その中で団体作りや国際協力の枠組みなどが本格化しました。その後2015年に「インダストリー4.0実践戦略」が発表され※)、技術的なロードマップなどが示され、さまざまな技術開発や製品およびサービス作りが本格化したという流れがあります。
※)関連記事:インダストリー4.0がいよいよ具体化、ドイツで「実践戦略」が公開
そして、2016年後半から2017年にかけて実際にIoTなどの技術がはまる領域が見定められ、製品やサービスの展開が開始されました。こうした動きがインダストリー4.0の「現実化」への動きを推し進めています。
一方で、筆者が個人的に感じたのが「生みの苦しみ」です。フェーズ2までのコンセプトベースの話であれば、実証の仕組みまでを作れればよかったのが、「現実化」が進めば進むほど、さまざまな課題が生まれ、それを1つ1つつぶしていく作業が必要になります。思い描いたコンセプトを実現するまでには時間も手間もかかることも分かってきて、フェーズ2の時期ほど新しいものがどんどん出るような状況ではなくなっています。
そういう意味では、現実的な課題をクリアする「ブレークスルーの手前」の段階が現在のフェーズ3といえるのではないでしょうか。企業にとっては、これらの山積する課題の中で、いかに最短コースを進み、新たな価値をモデル化できるかどうかがブレークスルー後の世界で先行できるかどうかのカギを握ると見ています。地味に見えるかもしれませんが、フェーズ3の数年が今後に向けた、勝負の時といえるのかもしれません。
さて今回は、インダストリー4.0の動向をベースに第4次産業革命のフェーズについて考えてみました。次回もハノーバーメッセで見えたトピックについて紹介したいと思います。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.