製造業の産業構造を大きく変えるといわれている「第4次産業革命」。本連載では、第4次産業革命で起きていることや、必要となることについてお伝えしています。第13回となる今回は、2017年4月に開催されたドイツの「ハノーバーメッセ 2017」で見えた傾向についてまとめます。
本連載は、「いまさら聞けない第4次産業革命」とし、第4次産業革命で製造業が受ける影響や、捉える方向性などについて、分かりやすくご紹介していきたいと考えています。ただ、単純に解説していくだけでは退屈ですので、架空のメーカー担当者を用意し、具体的なエピソードを通じて、ご紹介します。
※)本連載では「第4次産業革命」と「インダストリー4.0」を、意味として使い分けて表記するつもりです。ドイツ連邦政府が進めるインダストリー4.0はもともと第4次産業革命という意味があります。ただ、本稿では「第4次産業革命」は一般用語として「IoTによる製造業の革新」を意味する言葉として使います。一方で「インダストリー4.0」はドイツでの取り組みを指すものとします。
矢面 辰二郎(やおもて たつじろう)
自動車部品や機械用部品を製造する部品メーカー「グーチョキパーツ」の生産技術部長。ある日社長から「君、うちも第4次産業革命をやらんといかん」と言われたことから、話が始まる。多少優柔不断。印出研究所に入り浸っている。
印出 鳥代(いんだす とりよ)
ドイツのインダストリー4.0などを中心に第4次産業革命をさまざまな面で研究するドイツ出身の研究者。第4次産業革命についてのさまざまな疑問に答えてくれる。サバサバした性格。
*編集部注:本記事はフィクションです。実在の人物団体などとは一切関係ありません。
第12回:「CeBIT 2017が日本の製造業に残したもの」
従業員200人規模の部品メーカー「グーチョキパーツ」の生産技術部長である矢面辰二郎氏はある日、社長から「新聞で読んだけど、君、うちも第4次産業革命をやらんといかん」と言われます。しかし、「第4次産業革命」といわれても「それが何なのか」や「どう自分たちの業務に関係するのか」がさっぱり分かりません。そこで、矢面氏は第4次産業革命研究家の印出鳥代氏に話を聞きに伺うことにしました。
さて前回は、日本がパートナーカントリーを務め、日本とドイツの第4次産業革命に対する連携が大きく進展した「CeBIT 2017」の意義と成果について紹介しました。矢面さんは「CeBIT 2017」に参加したんでしたね。その「CeBIT2017」の意義について、印出さんは、以下のように述べていました。
政府間連携は進んだわね。「ハノーバー宣言」という共同声明も出たわよ。
「ハノーバー宣言」は、日本政府とドイツ連邦政府で、第4次産業革命に関して、新たに9項目において協力を進めていくという共同声明でしたね※)。従来の次官級の協力から閣僚級へと引き上げた点と、9項目へと拡大した点が特徴でした。
※)関連記事:日独で第4次産業革命に向けた「ハノーバー宣言」採択、9項目で協力へ
一方で、118社と過去最高の出展となった日本企業の中には「なんとなく」出展していた企業もあったとします。
なんともいえないんですよね。積極的にアピールをして、盛り上がっているブースもある一方で、ブースの担当者そのものが戸惑っているところもあったような……。
印出さんはこうした日本企業の姿勢に疑問を示していましたね。
ドイツと日本は似た経済構造だけど、大きな違いの1つに中堅以下企業の海外取引の比率があるわ。こうした出展のチャンスを生かすのか、生かさないのかというところにも違いが出ているような気がするわ。
「CeBIT 2017」での取り組みを“打ち上げ花火”で終わらせないためにも次のアクションにつなげてもらいたいものです。
さて、今回は、「CeBIT2017」の翌月に同じドイツ・ハノーバーで開催された「ハノーバーメッセ2017」を取り上げます。「ハノーバーメッセ」は「インダストリー4.0」のコンセプトが発表された展示会でもあり、毎年「インダストリー4.0」の進捗点を探る展示会として関心を高めています。今回は「ハノーバーメッセ2017」で見えた傾向の1つを紹介したいと思います。
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