ドイツのインダストリー4.0がきっかけとなり関心が高まった、IoTを活用したスマートファクトリー化への動きだが、2017年は現実的成果が期待される1年となりそうだ。既に多くの実証成果が発表されているが、2017年は、実導入ベースでの成功事例が生まれることが期待される。
IoT(モノのインターネット)を活用したスマートファクトリー実現への動きは、ドイツ連邦政府が2011年にコンセプトを示した「インダストリー4.0」によって加速。特に2014年に「インダストリー4.0 最終報告書」が示されてからは、日本の製造業からも多くの関心を集めるようになった。ただ、注目されるようになって約3年が経過し取り組みは定着。活動のポイントや課題なども徐々に見えつつあり、2017年は成果が求められる1年になるだろう。
スマートファクトリーの実現には、異なるシステムや機器間を「つなぐ」必要があるが、それぞれが異業種だったり、競合だったりする中で、こうした話をできる場がなかった。そこで2015年には、ロボット革命イニシアティブ協議会(RRI)やIoT推進コンソーシアム、IVI(Industrial Valuechain Initiative)など、異業種や競合企業が集まり、連携について話し合える場作りが進んだ。さらに2016年には、日本政府や国内の団体と、海外政府や海外団体の協力の動きが一気に進み、国際的な土台作りが進展した1年となった。
2016年4月には、日本政府とドイツ連邦政府が、IoTおよび第4次産業革命における6項目の覚書を締結※)。同時にそれぞれの主要推進団体であるRRIと「プラットフォームインダストリー4.0」も6項目で協力を発表し、実際にさまざまな活動が進み始めている。
※)関連記事:インダストリー4.0における“世界の軸”へ、日独連携の潜在力
一方でIoT推進コンソーシアムは2016年10月に、米国発でグローバル化が進んだIoT実装団体「インダストリアル・インターネット・コンソーシアム(IIC)」と提携。既にIICでは、ドイツのインダストリー4.0推進組織である「プラットフォームインダストリー4.0」と標準化などにおいて連携する方針を示しており、今回IoT推進コンソーシアムとの連携が実現したことで、日米独の連携関係構築が進むことになる。
ちなみにIoT推進コンソーシアムは、フォグコンピューティングの普及促進に取り組む「OpenFog Consortium(オープンフォグコンソーシアム)」との提携も進めており、2016年は団体同士の連携が各所で進んだ。
土台作りの大枠については2016年でほぼ見えてきた。ただ、政府や組織間の連携強化と主導権争いの動きは継続的に続く見込みだ。その中で2017年のポイントとなりそうなのが、2017年3月にドイツのハノーバーで開催されるIT関連の展示会「CeBIT」と同じくドイツで開催されるG7(先進7カ国財務相中央銀行総裁会議)である。
CeBITでは毎年パートナー国を決め、首脳会談やパートナー国企業の誘致などを行っているが、2017年のパートナー国は日本だ。日本企業が出展する日本パビリオンの設置が行われる他、同期間に安倍首相とメルケル首相の首脳会談が行われるなど、IoTを含めた経済連携に期待が集まっている。また、2017年のG7はドイツで開催され、議長国はドイツとなる。CeBITでの経済協力が決まればその方向性をG7で展開することなども可能となり、政府間協力や国際連携のポイントになると予想されている。
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