HERE Technologies(HERE)が位置情報プラットフォームの事業展開について説明。会見では、同社でアジア太平洋地域を担当するディオン・ニューマン氏が、中国の自動車メーカーが業界を再定義する勢いで開発のスピードを加速させていることを強調した。
HERE Technologies(以下、HERE)は2025年11月12日、東京都内で会見を開き、同社の位置情報プラットフォームの事業展開について説明した。
1985年に米国で創業した同社(当時の社名はNavigation Technologies)は40周年を迎える。1990年代後半から世界各国の自動車メーカー向けに電子地図データの提供を開始し、2004年にはモバイル機器向けにも展開を広げてさらに事業を拡大した。2008年には携帯電話機最大手だったノキアの傘下となるものの、同社の携帯電話機事業からの撤退に合わせて2015年にはBMW、アウディ、ダイムラーの3社連合に買収されている。その後は、インテル、ボッシュ、コンチネンタル、パイオニア、三菱商事、NTTなど出資企業が拡大しており事業成長も続けている。
HERE アジア太平洋地域担当 シニア・バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーのディオン・ニューマン(Deon Newman)氏は「位置情報の技術は進化を続けてきたが、当社は常に先頭を走ってきた自負がある。現在、70社以上の自動車メーカーと取引があるが、これからSDV(ソフトウェアデファインドビークル)の時代に入る中でもイノベーションと安全を両立させながら最新技術を提供していきたい」と語る。
会見では、アジア太平洋地域を担当するニューマン氏から、中国における自動車開発の現状についての解説があった。HEREが取引する自動車メーカー数は先述した通り70社以上だが、このうち中国の自動車メーカーは30社以上であり半分近くを占める。「例えば、SAIC(上海汽車)、ジーリー(吉利汽車)、NIOなどと取引がある。グローバル展開を急速に拡大する中国の自動車メーカーが海外に輸出する自動車の90%にはHEREの技術が採用されている」(ニューマン氏)という。
この背景にあるのが、HEREが200以上の国と地域で地図データサービスを展開している実績だ。ニューマン氏は「さまざまな国や地域へ展開を広げたい中国の自動車メーカーから高い評価が得られている。1990年代に日本の自動車メーカーとの取引が始まったのも同様の理由からだった」と説明する。
HEREが展開する位置情報プラットフォームにとって、自動車の機能で最も関わりが深いのがナビゲーションと自動運転だ。同社の調査によれば、2025年時点でのナビゲーションの普及率は日本の50%、米国の65%、欧州の61%に対して中国が82%となっており、中国が他の国/地域を圧倒する結果となった。「中国メーカーの自動車はコックピットに大型のディスプレイとカメラが複数搭載されており、そこにナビゲーションが組み込まれるなど全部入りになっており驚かされる。他国の自動車はそこまでは行っていない」(ニューマン氏)。2030年に向けて各国/地域で普及は広がるものの、日本は49%にとどまり、米国の78%、欧州の69%、中国の87%と比べると大きく差を空けられた状況は変わらない見込みだ。
さらに自動運転技術についても、中国での普及が一気に加速していく見通しだ。2025年時点におけるレベル2+〜4の自動運転技術の普及率は、日本は22%で、米国の11%、欧州の3%を大きく上回っているが、中国も既に23%に達している。そして2030年の見通しでは、日本は32%で、米国の22%、欧州の20%より先行しているものの、中国は63%と一気に普及が拡大するという。ニューマン氏は「中国の自動車メーカーは、ナビゲーションと連動するレベル2+の自動運転技術を手ごろな価格で提供し始めており、ローエンドからハイエンドまで普及させようとしている。現在のナビゲーション普及に向けた動きと同じ流れだ」と述べる。
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