電話対応を半減! アナログな港湾をCyber Portは救えるか船も「CASE」(1/4 ページ)

国土交通省は「Cyber Port(サイバーポート)」の活用に向けたWebセミナーを開催した。サイバーポートは、民間事業者間のコンテナ物流手続を電子化して作業の効率化を目指すプラットフォームだ。

» 2023年09月25日 06時00分 公開
[長浜和也MONOist]

 国土交通省は2023年8月31日、「Cyber Port(サイバーポート)」の活用に向けたWebセミナーを開催した。サイバーポートは、民間事業者間のコンテナ物流手続を電子化して作業の効率化を目指すプラットフォームだ。サイバーポートの活用セミナーは既に4回目となるが、今回は特に港湾でコンテナの管理を手掛けるターミナルオペレーターに向けた活用方法に特化した内容となっている。

電話やFAX主体の海洋物流業務をデジタル化するには

 サイバーポートは海上コンテナ物流で発生する諸手続きを電子化するプラットフォームだ。海上物流では膨大な量の手続きを経て行われる業務で、それに伴ってそれぞれの手続きで発生する書類も膨大な量となる。これら書類のやりとりはFAXや電話といった手段で行われていた。近年になって個別の手続きによっては電子ファイルを用いるケースも出てきているが、この場合でもそれぞれ個別にフォームやテキストで入力してファイルを作成する必要があり、その段階で入力ミスが発生するリスクも抱えていた。

 サイバーポートではこれら諸手続きの入り口で一度入力したデータをそのままその後に発生する全ての手続きでも“使いまわす”ことで業務の効率化を図っている。既にデジタルデータの利活用を導入していた港湾関連組織も多数あるが、そのそれぞれで独自規格のデジタルデータを採用していると、それら組織をまたがった共有ができなかった。サイバーポートでは、業界全体で共通のシステム(それがサイバーポートとなる)を導入することで、一度入力したデータの使いまわしが全ての手続きで可能となる。

 サイバーポートの活用を促進するWebセミナーは既に過去3回実施されている。第4回となる今回のWebセミナーでは、コンテナターミナルにおけるサイバーポート活用の中でも、特に空のコンテナのピックアップオーダーに注目した業務改善について、サイバーポートの開発担当でもある、みなと総合研究財団 客員研究員の坂本啓氏が説明した。輸送を終えて空荷状態のコンテナ管理は物流業務において輸送効率を阻害する大きな問題の1つとされている。

複数の手段と形式が共存する業界に共通システムを導入する難しさ

 坂本氏は、空コンテナピックアップ業務の現状分析結果からピックアップの申し込みと回答業務の現状パターンを整理した上で、サイバーポートの導入でどのように業務が変わるのかを示すとともに、実際に空コンテナピックアップ業務でサイバーポートを導入した三井倉庫と伏木海陸運送の事例を紹介。併せて、現在FAXだけで業務を回している“ある”ターミナルオペレーターの取り組みも導入で発生する作業の実例として説明した。

 坂本氏は、空コンテナピックアップ業務の現状について、「基本的にターミナルオペレーターが指定した方法によりピックアップの申し込みをする形式となっているものの、FAX業務を電子化するためにオンラインシステムへ切り替わっている流れはある」と述べた。ただ、企業や組織が独自に開発したそれぞれのシステムにより利用範囲が異なったり、オンラインのシステムに移行していても実際にはFAXと併用必須の場合もあったりと「空コンテナピックアップという作業自体は単純なはずなのに、依頼方法の違いにより複雑な作業になっているのが現状」(坂本氏)と指摘する。

空コンテナピックアップで発生する問い合わせ回答フロー。現代らしくオンラインのシステムを介するフローやNACCSを介するフローも増えているが現状としては電話とFAXが大勢を占める[クリックで拡大] 出所:国土交通省

 また、依頼を受けたターミナルオペレーター内部でも、空コンテナピックアップ申し込み受領後からブッキング情報(輸送に携わった船舶のコンテナ置き場予約状況)や、コンテナ在庫などの確認を行い、受け付けた申し込み方法に合わせて回答することになる(電話での申し込みなら電話で、FAXでの申し込みならFAXで!)。ただ、事前にブッキング情報を取り込んだり、申し込み受領後から船会社のシステムに対して確認と入力作業などが発生したりとターミナルオペレーターによって業務フローが異なることが多い。

 そればかりか、船会社のシステムやTOS(Terminal Operation System)などの連携状況によって業務フローが異なるなど、空コンテナピックアップ業務一つにしても多種多様な方法が乱立している状況にある。

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