電話対応を半減! アナログな港湾をCyber Portは救えるか船も「CASE」(2/4 ページ)

» 2023年09月25日 06時00分 公開
[長浜和也MONOist]

一気総入れ替えではなく段階的な導入を

 このような“複雑怪奇”な港湾業務フローをサイバーポートの導入によって「システム間連携ができ、入力工数を削減できる」(坂本氏)という。

 業務フローのデジタル移行を考えると、全ての工程をサイバーポートで完結するのが最も望ましいのはITに携わった人ならすぐに理解できるだろう。しかし、坂本氏はデジタル化が進んでいない業務への導入においては「理想の実現は簡単ではない」と警告する。「全てサイバーポートが発行する帳票で行う完結型がもちろん理想。しかし、理想の実現は簡単ではないので、まずFAXをなくすこと。FAXをサイバーポートに切り替えることからならできるのではないか」(坂本氏)

 一方で、既にデジタル移行に取り組んでいる企業の中にはFAXや電話からWebサービスに移行しているターミナルオペレーターもある。ただし、その場合でもデータフォーマットが独自形式であるため、業界標準システムとして導入したいサイバーポートとは相いれない場合も多い。その場合は、「空コンテナピックアップ申し込みに対する回答とサイバーポートをデータ連携することによりデータの共有がタイムリーに行われ、それからサイバーポートを活用する“Webプラスサイバーポート型”という方法がある」(坂本氏)としている。

 さらに、港湾で利用されている先行システムとして、入出港する船舶や航空機、輸出入される貨物について、税関その他の関係行政機関に対する手続きおよび関連する民間業務をオンラインで処理する「NACCS」がある。2017年10月からは国土交通省所管の港湾サブシステムをNACCSに統合するなど、港湾・空港における物流情報などを総合的に管理するプラットフォームシステムとして利用が進んでいる。

 このNACCSと既に連携されているターミナルオペレーターに対しては、申し込み側はサイバーポートで申し込み、ターミナルオペレーターはNACCSで回答する“サイバーポートプラスNACCS型”での導入も検討できるとしている。

サイバーポートを導入する場合、理想はサイバーポートで完結するシステムの構築だがハードルも高い。まずは、電話やFAXなどの置き換えから徐々に進めるのがいい[クリックで拡大] 出所:国土交通省

 セミナーでサイバーポート導入事例として紹介された三井倉庫では、空コンテナ搬出予約において従来の自社システムによる対応だけでなく、サイバーポートに新規登録と新規取引を加えた。これにより、空コンテナピックアップに関するサイバーポート用確定情報が自動で作成されるだけでなく、相手もサイバーポートを導入していれば同時に情報が共有できるため従来のように電話やFAXで情報を別途展開する必要がなくなったという。

三井倉庫の導入事例では双方サイバーポートを導入していれば電話やFAXでの展開が必要なくなったことで情報の共有が容易になったという[クリックで拡大] 出所:国土交通省

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