日米独仏中が参加しなかった、「2040年までに全てゼロエミッション車」の宣言自動車業界の1週間を振り返る(2/2 ページ)

» 2021年11月13日 08時00分 公開
[齊藤由希MONOist]
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地球のために喜んでライフスタイルを変える人はほとんどいない

 英国の一般紙The Guardianは、「地球を救うために喜んでライフスタイルを変えようとする人はほとんどいない」とする調査結果をまとめた記事を掲載しています(参考:Few willing to change lifestyle to save the planet, climate survey finds)。

 米国、英国、スペイン、フランス、オランダ、ドイツ、スウェーデン、ポーランド、シンガポール、ニュージーランドで1000人を対象に調査を実施したところ、76%の人がより厳しい環境規制を受け入れると回答した一方で、46%は個人的な習慣を変える必要はないと回答しました。

 また、「地球を守るためにどのような行動を優先すべきか」という質問に対しては、「すでに習慣化されているもの」「個人の努力が少なくて済むもの」「自分が直接責任を負う必要がないもの」を重視する傾向がありました。自分勝手で無責任なように見えますが、なかなかリアルですよね。

 そういうタイプの人たちのうち一定数は、EVに買い替えた結果、今までと全く同じクルマの使い方ができなくなることを敬遠するような気がします。そしてそのような考えを持つ人は、EVが不便だといわれる点がいかに小さなことか、エンジン車のときの習慣を変えることがいかに簡単であるかを聞かせても、価値観を変えるまで時間がかかります。そこまで否定的でなくても、他に選択肢がある中で今わざわざEVを買う必要を感じないという程度の消極的な人も少なくなさそうです。

 実際に、この調査で「地球を守るために重要だと思う対策」を尋ねたところ、「廃棄物の削減やリサイクルの拡大」「森林の再生」「絶滅危惧種の動物保護」「エネルギー効率の高い建物の建築」「再生可能エネルギーによる発電への置き換え」を挙げた人は半数前後に上りました。自分が個人的に努力しなくても、誰かがやってくれる……と思われがちな対策が多いですね。

 しかし、「クルマではなく公共交通機関を使うこと」「化石燃料車の禁止」「肉の消費量抑制」「飛行機の利用を減らす」といった、個人のライフスタイルに変更が生じる対策について、重要だと回答した人は2割前後にとどまりました。

 そんな人々が一定数いることを考えると、行動を変えさせるには購入補助や減税などのインセンティブが有効ではあります。しかし、各社ともゼロエミッション車を多数投入する中ではインセンティブが本来の目的を果たさない可能性もありますし、「他よりも安くなるから買う」という動機付けがどこかの段階で通用しなくなります。

 ゼロエミッション車のみのラインアップにせよという法的拘束力は今のところなく、ユーザーの意向がどうあっても絶対に全車EVとするような断固たる姿勢の自動車メーカーもありません。環境保護のために喜んでライフスタイルを変える消費者ばかりではないことも示されました。誰もが相手の顔色と出方を伺い、互いに相手が動くまで自分は決定的な行動を起こせないと様子見で構えているように見えてしまいますね。

→過去の「自動車業界の1週間を振り返る」はこちら

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