パナソニックが磁界を用いた新たな近距離無線通信技術「PaWalet Link」を開発。通信方式としてOFDM(直交周波数分割多重方式)の一種である「Wavelet OFDM」を適用しループアンテナを利用することで通信範囲を数mm〜数十cmに制限可能であり、有線通信やワイヤレス給電と組み合わせたハイブリッドなシステムも容易に構築できる。
パナソニックは2021年11月10日、オンラインで会見を開き、磁界を用いた新たな近距離無線通信技術「PaWalet Link」を開発したと発表した。通信方式としてOFDM(直交周波数分割多重方式)の一種である「Wavelet OFDM」を適用しループアンテナを利用することで通信範囲を数mm〜数十cmに制限可能であり、有線通信やワイヤレス給電と組み合わせたハイブリッドなシステムも容易に構築できる。技術そのものは完成しており、IEEE 1901(高速電力線通信:HD-PLC)に対応する送受信ICを用いればシステム構築も可能な状況にある。今後は、EV(電気自動車)や電動キックボードなどの電動モビリティ、産業用ロボット、インフラロボット、サービスロボットなど、ワイヤレス充電とデータ伝送を同時に行う用途を中心に実用化に向けた開発を進める。
PaWalet Linkは、近距離無線通信の中でも、通信範囲を厳密に制限しながら一定以上の高速通信を行いたいというニーズに応える技術だ。数百mの通信が可能なWi-Fiは高速である一方で、広範囲に信号が伝搬するのでセキュリティ面に課題がある。Bluetoothも通信距離が10m前後に制限されるものの、やはり一定範囲に信号が伝搬することに変わりはない。電子マネーなどで用いられるNFCは、伝搬範囲は制限できるが通信速度が遅い。パナソニック コーポレート戦略・技術部門 事業開発室 主幹技師の古賀久雄氏は「PaWalet Linkであれば、ループアンテナの大きさや送信電力を制御することで通信範囲を数mm〜数十cmの間で簡単に制御でき、通信速度は最大数百Mbpsを確保できる」と語る。
PaWalet Linkは110MHzまでの周波数帯域を使用する。通信方式のWavelet OFDMは、IEEE 1901の物理層に用いられている実績のある技術で、誤り訂正、ダイバーシティー、伝送路推定技術、暗号などロバストな通信に必要な機能とともに、Wi-Fiなどでも用いられているCSMA/CAを利用したキャリアセンスによる干渉回避機能も備えている。PaWalet Linkでは、最大432本のWavelet OFDMを利用して通信を行うが、既存システムで用いられている通信との干渉を避けるために必要なノッチ形成を容易に行うことができる。
また、通信モードとチャネルIDを切り替えることで、通信速度や隣接機器との干渉を軽減できる。モード数は9、チャネルID数は15あり、各ネットワークでモードとチャネルを選択すれば、PaWalet Link間での干渉回避もしやすい。通信速度は、アンテナサイズとアンテナ間距離で定まるので「要件仕様としてアンテナ間距離と伝送速度が定義できれば、必要なアンテナサイズが決まる」(古賀氏)という。
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