組み込みシステムの開発プラットフォームを展開するQNXはこのほど、世界各国の医療、製造、自動車、重機産業の経営幹部1000人を対象にロボットの導入に関する最新調査を実施した。同調査では、ロボット導入に対する日本と中国の考え方の違いが浮き彫りになった。
日本は多数の産業用ロボットメーカーが本拠を置くとともに、世界の産業用ロボット市場における国別シェアでトップとなっていることから「ロボット大国」と呼ばれることもある。また、国内の製造業はモノづくりにおけるロボット活用にも積極的だ。
一方、ロボットの開発で大きな存在感を見せ始めているのが中国だ。かつて先進国の受託生産に対応するため人海戦術を繰り広げていた工場において、近年の人件費の上昇に対応するようにロボットを活用した自動化を急速に進めている。また、産業用ロボット市場でも有力メーカーが登場している他、汎用人型ロボットの研究開発では世界をリードしているともいわれる。
ブラックベリー(BlackBerry)傘下で組み込みシステムの開発プラットフォームを展開するQNXはこのほど、世界各国の医療、製造、自動車、重機産業の経営幹部1000人を対象にロボットの導入に関する最新調査を実施した。なおこの1000人には、北米250人(米国150人、カナダ100人)、ドイツ150人、フランス150人、中国100人、日本100人が含まれている。
この調査では、ロボット導入に対する日本と中国の考え方の違いが浮き彫りになる結果となった。まず、「現在ロボットを利用している組織の割合」という設問への回答では、中国が89%と圧倒的トップになった一方で、フランスが51%、ドイツが47%など他の国が50%前後で続き、日本は41%と最下位になった。
次に「ロボット運用の準備ができている」という設問への回答でも、トップは94%の中国で、以降はドイツが74%、北米が69%で続く中、最下位となったのが42%の日本だった。
さらに、「ロボットを信頼している」(完全に/高/中程度の合計)という設問への回答は、世界平均が77%で、中国は92%、日本は国別で最も低い63%という結果になった。逆に「ロボットを全く信頼していない」という設問への回答では、世界平均の15%に対し、日本は23%と大きく上回る状況になっている。
これらの結果から分かるのは「現時点でのロボット活用」「将来に向けたロボット導入」「そしてロボットを信頼して仕事を任せる」という3つの観点で、中国が極めて積極的な姿勢であるのに対して、日本の消極性が鮮明になったということである。QNX Japan カントリーセールスディレクターのアガルワル・サッチン氏は「中国がロボット導入の積極性で世界をリードする結果になったのは、2015年に発表した産業政策『中国製造2025』が反映された結果だろう。毎年継続している生産性向上のために、ロボットを積極的に取り入れており、その取り組みを支える政府からの支援も充実している」と語る。
また、中国の社会性として実践的(Practical)であることも理由として挙げた。「例えば、労働力全体の3分の1をロボットに置き換えるという目標に向けて、それを実現するためのコストと効率の最適化をPracticalに進める文化がある」(サッチン氏)という。
これら以外にも、調査対象に製造業が多いことや(中国は27%、日本は19%)、中国国内でのロボット産業の伸長、沿岸部を中心に急速に進む高齢化と人材不足への対応などの影響もあるとした。
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