自分に向けて言うのはいいかもしれませんが、他者、特に次世代に向けて言うべきではありません。
「COP26」(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)の開催期間中なので、気候対策に関するニュースが多いですね。先日、石炭火力発電の廃止を求めて東京都内で実施されたデモの中で、高校生が「これ以上の豊かさはいらない」と街頭で訴えたのを紹介したニュースがありました。個人的に観測できる範囲では、その認識の甘さを指摘する意見が複数見られました。
石炭火力発電の廃止と、これ以上豊かな生活はいらないという主張を結び付けたのは、うまい見せ方ではありませんでした。東日本大震災のあとの計画停電、台風などの災害に伴う停電、冬場の電力逼迫などを考えると、安定した電力なしに今の生活を現状維持することさえ簡単ではないからです。病院など電力が人の命をつないでいる場所もあります。
日本で使う電力のうち、石炭で発電する電力の比率は決して小さなものではない中で、漠然と“脱石炭”を叫んでも、「原発賛成ということか?」「電力供給が不安定になった分の犠牲をどう考えるのか」というツッコミが入るのは当然です。
「これ以上の豊かさはいらない」という感覚には同意できる部分もあります。例えば、Amazonで注文した急ぎでも何でもない日用品が深夜に発送されて翌日届くような、必要以上に過剰なサービスを受けていると「そこまでしなくても……」と思ってしまいます。しかし、「これ以上豊かじゃなくていい」と押し付けてはいけない場面の方が多いようにみえます。
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