今回のプロジェクトには、パナソニック、ダイフク、日立製作所、CYBERDYNE、本田技術研究所、トヨタ自動車、アイシン精機、IDECといったメーカーが参画。それぞれ、安全技術を導入したロボットの開発を行った。記者説明会の会場で展示されていたロボットについて、最後に簡単に紹介しておこう。
リショーネは、電動ケアベッドと電動リクライニング車いすが融合したロボット介護機器。ベッドの半分が分離して車いすになるので、要介護者を抱きかかえる必要がなく、介助者が1人いれば車いすへの移乗が可能になる。価格は100万円くらいを想定しており、2014年度の早期に販売を開始したいそうだ。一方、「ロボティックベッド」は自立支援用で、車いすが電動になっている。こちらの発売・価格は未定だ。
ロボットスーツHALは、歩行をアシストする装着型のロボット。国内で販売されている福祉用のHALは、これまでに160施設で400台以上が稼働しているそうだ。HALは前述の通り、既にISO 13482のドラフト版の認証を取得しているが、今後、正式版との差分の審査を行い、正式版の認証に移行する予定だという。また医療用のHALは現在欧州でのみ販売されているが、薬事承認され次第、国内での販売も開始する計画。
「歩行アシスト」は、リハビリ向けの装着型ロボットである。発売・価格とも未定だが、100台のロボットを使って、現在医療機関で実証試験が行われているところだ。ISO 13482の認証は2014年に取得する予定だという。
「セニアカー」の重大事故の70%は側溝などへの転落とのことで、レーザーレンジファインダを使った段差検出センサーを開発した。段差を検出すると停止するようになっており、転落を予防できる。セニアカー自体の販売は考えておらず、開発した安全機能をメーカーの製品に搭載することを計画しているそうだ。ISO 13482は既に申請済みで、2014年2月中に取得できる見込みとのこと。
アイシン精機は、時速10kmでの高速走行を想定した電動車いすを開発した。現在、電動車いすは法律で時速6km以上出すことはできないが、より速ければ行動範囲を広げることができる。高速でも安全なように、3Dレーザーセンサーやリスク計算ユニットを搭載しており、周囲の危険を感知したときは自動で減速する。実際に時速10kmで走るためには法改正が必要となるものの、2018年ころに電動車いすおよび安全機能単体での販売を開始する計画。
「Winglet」は、いわゆる“セグウェイ型”の搭乗型ロボットである。MEGA WEBなどで試乗が可能なので、実際に乗ってみたことがある人も多いだろう。当初はショッピングセンターや空港など業務用途が中心となりそうだが、もし道路交通法が改正され、公道での走行が可能になれば、個人用途も視野に入ってくるかもしれない。お客さんからの声では「10万〜20万円くらいなら欲しい」という声が多いそうだ。
大塚 実(おおつか みのる)
PC・ロボット・宇宙開発などを得意分野とするテクニカルライター。電力会社系システムエンジニアの後、編集者を経てフリーに。最近の主な仕事は「人工衛星の“なぜ”を科学する」(アーク出版)、「小惑星探査機「はやぶさ」の超技術」(講談社ブルーバックス)、「宇宙を開く 産業を拓く 日本の宇宙産業Vol.1」「宇宙をつかう くらしが変わる 日本の宇宙産業Vol.2」(日経BPマーケティング)など。宇宙作家クラブに所属。
Twitterアカウントは@ots_min
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