日本は産業用ロボットの出荷台数・稼働台数で世界一を誇る。一番多く作って、一番多く使っているのだ。自動車の大量生産を追い風に、1970年代後半、国内で初めてオール電気式の産業用ロボットを発売し、今なおロボット開発に情熱を注ぎ続ける安川電機に、産業用ロボット市場の動向について伺った。
ロボット業界で最大の市場は、間違いなく“産業用ロボット”である。サービスロボット市場も立ち上がりつつあるものの、まだ規模でいえば桁が違う。日本が「ロボット大国」と呼ばれるのは、この産業用ロボット市場において、世界トップのシェアを誇っているからだ。本連載で「ロボット大国・日本」をテーマに掲げている以上、産業用ロボットについて触れないわけにはいかないだろう。
今回、産業用ロボット市場の動向について、安川電機 東京管理部 広報・IRグループ長の林田歩氏に話を聞いた。
産業用ロボットが導入されている代表的な例が自動車の生産工場だ。自動車は典型的な大量生産品。早く・安く作るためにはロボットによる自動化が効果的で、溶接や塗装などの用途でいち早くロボットが普及した。
安川電機は日本で初めて、オール電気式の産業用ロボットを発売したメーカーである。1号機「MOTOMAN-L10」を初めて受注したのは1977年のこと。当時、まだ職人の技術だった溶接作業のロボット化に成功し、自動車メーカーに納入したのが始まりだ。大量生産のために、24時間働けるロボットへのニーズが急速に高まっていた時代。これ以降、ロボットの導入はどんどん進み、自動車の生産には欠かせないものになっていく。
産業用ロボットの主流は、6自由度の垂直多関節ロボット。人間の腕のような動きが可能になっており、手首部分を取り換えることでさまざまな用途に対応することができる。ロボットの大きさや種類などによっても異なるが、位置決め精度はおおむね0.1mmを実現しており、同じ動きを精度良く繰り返すことができる。
日本は、産業用ロボットの出荷台数でも稼働台数でも世界一、つまり一番多く作って、一番多く使っているのだ。しかし、それでも「われわれプロからすると、ロボット大国だとは全然思っていないんですよ」と林田氏はいう。
同社の累計出荷台数は、2010年度までに23万台。これは世界トップだが「日本の産業用ロボットの技術は、自動車メーカーが育ててくれたものです。高品質な自動車を早く安く作るために、ロボットはどうあるべきかということを、どんどんニーズとして出してくれた。それに対して、われわれロボットメーカーは一生懸命対応してきただけ」と林田氏は控え目だ。
現在、産業用ロボットは半導体・液晶分野や食品・医薬品分野など、幅広い分野に適用分野を広げているものの、依然として主流は自動車分野だ。同社の2010年度の連結売上高2968億円のうち、ロボット事業部の売り上げは28%を占める838億円であるが、今でもこの7〜8割は自動車メーカー向けだという。
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