情報通信研究機構(NICT)は、自律飛行する「小型無人飛行機」および地上局で構成される無線中継システムと、ソーラーパネル・蓄電池一体型の持ち運び可能な「無線基地局(ソーラー可搬基地局)」を組み合わせた長距離の無線中継通信実験に成功したと発表した。
情報通信研究機構(NICT)は2013年7月17日、自律飛行する「小型無人飛行機」および地上局で構成される無線中継システムと、ソーラーパネル・蓄電池一体型の持ち運び可能な「無線基地局(ソーラー可搬基地局)」を組み合わせた長距離の無線中継通信実験に成功したと発表した。
NICTは、災害発生時などの状況下において、迅速な通信手段の確保が必要なケースを想定して本システムを開発。今回用いられた小型無人飛行機による無線中継システムとソーラー可搬基地局は、総務省2011年度補正予算「情報通信ネットワークの耐災害性強化のための研究開発」において、NICTが開発した「耐災害ワイヤレスメッシュネットワーク」の技術実証を行うテストベッド設備の一部として開発・整備されたものである(関連記事:通信網の遮断を空から救え!! ――小型無人飛行機が孤立した被災地との間を結ぶ)。
今回、北海道広尾郡にある大樹町多目的航空公園において、5日間(同年6月16〜20日)にわたる実証実験を行い、最高高度500mまでの小型無人飛行機による無線中継実験を計30回実施した(雨天含む)。
この実験により、無線中継通信の安定性を確認したとともに、(1)人が持ち運びできる手軽な設備を用いて、小型無人飛行機から最大約15km離れた地上局との間で無線通信を実現。(2)ソーラー可搬基地局と組み合わせることで、商用電源を一切使用することなく、ソーラー可搬基地局周辺に無線LANゾーンを提供。(3)災害による孤立地域内でも商用電源なしで一斉緊急通報や安否確認、メール送受信、位置情報共有などの通信サービスが利用可能であることを確認し、その成果を得ることができたという。特に、(1)の成果に関しては、2つの地上局間の距離を最大30km、さらに2機の無人飛行機を同時に飛行させて順番に経由させれば最大45km程度まで延ばせる可能性があることを示したという。
今回の実験では、平たんな地形で、広い実験エリアの確保が容易な場所で実施したが、今後は、山間部や起伏のある地域での通信実験や商用電源に頼らない長時間運用実験など、実際の災害時を想定した実証実験を積み重ねることで実用化につなげていきたい考えだ。
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