設備やアイデアがなくても、ワクワクするモノづくりマイクロモノづくり 町工場の最終製品開発(20)(2/2 ページ)

» 2012年05月09日 10時40分 公開
[宇都宮茂/enmono,@IT MONOist]
前のページへ 1|2       
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

「ワクワクの連鎖」と「ニュートラル」

 お話を伺う中で、私がすごく共感した表現に、「ワクワクの連鎖」と「ニュートラル」があります。

 栗栖さんが仕事の依頼を引き受ける大きな要素が、「ワクワク」だそうです。つまり、「その仕事に、ワクワクすることができるかどうか」。これに関しては、私たちenmonoの2人とも、非常に共感しましたし、自分たちも実際、無意識にそういう選択をしてきたように感じます。

和やかな取材風景

 栗栖さん自身が大病を経験し、“今を生きること”を大切にしている背景から、「私でなくてもできる仕事ならば、無理に私が手掛けなくても良いのでは」というような表現をしていました。

 栗栖さん自身が手掛けるのであれば、「実験色の強い」「ユニークで新しい発想の物にする」というモチベーションで仕事に取り組むということです。

 仕事に関しては、栗栖さんがクライアントの要望を聞き、テーマやコンセプトを考え、豊富なネットワークから適切な人選をして、ディレクションをします。栗栖さんいわく、「企業やブランドを“演出する”」。自分が作品そのものを作ったりデザインしたりはしないけれど、キャスティングしたプレーヤーさんを適切にまとめ上げ、イベントやブランディングなどのお仕事を完成させていくのです。

 それぞれのプレーヤーやクライアントとのキャッチボールに、栗栖さんは“ワクワクしながら”ディレクションをします。結果として、お客さまの間にも“ワクワクの連鎖”が起こっていくのでしょう。

 もう1つのキーワードである「ニュートラル」ですが、これは栗栖さんがワクワク感を維持するために必要なスタンスなのだと私は思っています。仕事を進めると、どうしてもさまざまな人が関係し、バイアスが掛かりがちになります。なので、「そうならないように、ニュートラルでいる」ということです。

 受けた仕事の最終的な完成度を高めるためにも、こういうスタンスは重要になります。クライアントやスポンサー、演者、それぞれの言い分は聞いていくのでしょうが、最終的な決断は栗栖さんが“ニュートラルに”下す。そういうことがプロデューサーには求められるのではないでしょうか。

バリューチェーンをつないで形にするプロデューサー

マイクロモノづくりにおけるバリューチェーン(enmono社資料より)

 最後に、今回の栗栖さんについて、マイクロモノづくりのフレームワークに当てはめて簡単に整理しておきます。

 まず栗栖さんは、クライアントからの依頼でディレクターとして企画をし、資源確保のコーディネートもして、さらに試作品も作ってもらい、マーケティング、販売までコントロールしていました。

 この事例で重要なのは、イベントプロデュースの費用は、クライアントが持つ場合や、自治体などの助成金を取得する場合などがあるということです。「資金をどう調達するのか」、これがマイクロモノづくり実現の肝になってきます。

 栗栖さんの将来の夢は、オリンピックの総合演出。それは、ワクワク感の極地です。それを実現させるため日々仕事をして、ネットワークを構築しているということです。


enmono&中小企業ズ、デザフェスで「おばか祭」グッズを展示!

「マイクロモノづくり 町工場の最終製品開発」を執筆するenmonoは2012年5月13日、MONOistの記事でもおなじみの中小企業各社と共に「デザインフェスタ vol.35」(会場は東京ビッグサイト)に出展します(小間番号:i-177、i-176)。

このブースでは、MONOistのエイプリルフール限定企画「春のおばかモノづくり祭」に登場した製品の一部を展示します。読者の反響が大きかった「iPhone Trick Cover」「あの形をしたコマ」など、会場で購入していただける物もあります(「KC-01」は売りません……)。イベントにお越しの際は、ぜひお立ち寄りください。

藤沢さん

デザフェスで売るTrick Cover、

鋭意製作中なう!(ニットー藤沢さん)




発電会議のご案内

enmonoは、東京都大田区の町工場2代目集団「おおたグループネットワーク(OGN)」と組んで、「発電会議」という町工場が製品開発の種を見つけるためのオープンな商品企画会議を定期的に実施しています。製品企画の素となる発想は、1人ではなかなか難しいものです。この会が皆さんの「何を作るのか」というニーズ探しの一助になればと思っています。

開催予定日や会場、テーマなどの情報は、下記のFacebookページから確認できます。ぜひご参加ください。

>>「発電会議」(facebookページ)



Profile

宇都宮 茂(うつのみや しげる)

1964年生まれ。enmono 技術担当取締役。自動車メーカーのスズキにて生産技術職を18年経験。試作メーカーの松井鉄工所にて生産技術課長職を2年務めた。製造業受発注取引ポータルサイト運営のNCネットワークにて生産技術兼調達担当部長として営業支援に従事。

2009年11月11日、enmono社を起業。現在は、製造業の新事業立上げ支援(モノづくりプロデューサー)を行っている。試作品製造先選定、部品調達支援、特許戦略立案、助成金申請支援、販路開拓支援、プレゼン資料作成支援、各種モノづくりコンサルティング(設備導入、生産性向上のためのIT化やシステム構築、生産財メーカーの営業支援、生産財の販売代理、現場改善、製造原価、広告代理、マーケティング、市場調査、生産技術領域全般)など多岐にわたる。

Twitterアカウント:@ucchan

記事で紹介した企業も登場:MMS放送アーカイブ




「マイクロモノづくり 町工場の最終製品開発」バックナンバー
前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.