「日本国内で将来、どういうモノづくりが必要とされるか」――そんな思いから「アナハイム計画」は始まった。
マイクロモノづくりを成立させるためには、設備を持って製造する会社と、製品アイデアを持つ方とのコラボレーションが必須です。
今回は、ミナロ(みなろ)の代表取締役 緑川 賢司氏にお話を伺いました。ケミカルウッドと呼ばれる人工木材を使った木型/モデル加工/モックアップ/検査治具/試作製作を行う木型製作会社様のマイクロモノづくり事例です。緑川氏は、勤めていた木型製作所の閉鎖を機に、治具メーカーを起業したとのことです。
緑川氏は起業時、とにかく、いろいろなことにチャレンジをして仕事をしていたといいます。起業したばかりで既存取引先がないので、売り上げにつながるようなことなら何にでも取り組み、天然石の加工販売もしていたとのこと。
「2.5次産業」と称して、作って売るまでを手掛けるといったことを、緑川氏は2004年ぐらいから実施していました。今、私たちenmonoがマイクロモノづくりと称していることです。その当時を振り返られると、やはり「売ること」に最も苦労をしたそうです。
しかし新規に事業を創り出して、お客さまへ販売までしていくということをしなければ、仕事がないといった状況もあったのだと思います。
起業したばかりで、知名度がなく仕事もない……。時間はたくさんある中で、Webページ作成、ブログやメールマガジンの運営など、緑川氏は、当時普及し始めたインターネットを使って会社PRをしていきます。
私自身、前職の自動車メーカーにいた頃から、Webで製造業関係の情報を集めている中でミナロさんのブログ(『【ミナログ】製造業社長の逆襲』)はチェックしていました。当時は、製造業関係者のブログがほとんどなかった頃なのですが、その発言内容は刺激的かつためになることが多かったのです。
緑川氏が情報発信する中で、Web経由でさまざまな仕事の依頼が、少しずつ来るようになったということです。しかしWeb経由で来る仕事は、大抵、難しいものと決まっています。納期がタイトとか、コストが厳しいとか……。
ですが緑川氏は、来る仕事は拒まずに挑戦していったといいます。数々の困難な仕事に挑戦することで、社内の技術は鍛えられ、そしてお客さんの信頼も得られ、リピーターも増えていったのです。
納期やコストに関して、ミナロでは社員が、CAD/CAM、機械操作、段取り、仕上げなどをこなし、データ作成から、モデリング、機械操作、全てを行うということで、短納期、低コストを実現しています。
エンジニアからの仕事ばかりではないため、ときには図面がない仕事もあり、社員たちは苦労を重ねることになります。しかし、お客さんと会話しながら、仕上がりに対する抽象的なフィードバックをモデリングに反映させ、手仕上げで調整していく。職人的な感性と技術者的な対応の双方を兼ね備えた、“スーパー職人”の出来上がりです。
挑戦的な仕事を請け負うことでどんどんレベルアップし、それが信頼につながっていくのですね。
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