大企業を退職して、平板スピーカー製品を自分で開発、自分で販売! しかし、そう簡単にはいかない
プロトロ社が1998年に発明した平板スピーカーは「フレミングの左手の法則」が基本原理となっており、振動板を挟み込むように配置された磁石により作られた磁場の中で、振動板に張り巡らせた回路に電流を流すことで振動板が動き、振動板に押された空気が音波として伝わる仕組みになっています。
平板スピーカーは、自然の音に近い再生能力を持っています。音の指向性が非常に高く、音が遠くまで届くという特性を持ち、残響の多い建物の中でも声が明りょうに伝わることや、中音域の音のひずみが少なく非常にクリアで鮮明に聴こえることなど、利点として挙げられます。
平板スピーカー製品を開発・販売するライト・イアの大和 誠氏は、従来の発想にはない使い方を提案していかなければ、平板スピーカーの良さについて、いくら口頭で説明しても、ユニット単体のサンプルを渡しても、伝えきれないことを痛感したといいます。
今回も、大和氏の平板スピーカーとの出会い、商品開発、販売までの経緯を紹介しながら、マイクロモノづくりについて考えていきます。
大和氏のルーツを探っていくと、今日のライト・イアの商品へとつながっていくことが分かります。ここで、少し時をさかのぼっていきましょう――
――大和氏は、少年時代いわゆるラジオ少年でした。中学校に進んだ大和氏は、スピーカーボックスを作ったり、真空管を使ったラジオを作ったり、キットのアマチュア無線機を組み立てたりしていたといいます。高校時代には町工場でプリント基板のエッチングや、カーステレオの組み立てなどのアルバイトをしてモノ作りを体験し下請け工場の苦労も垣間見たとのことです。
大学を卒業すると小さなオーディオメーカーに就職し、アンプやレシーバーの設計を数機種担当した後、よりクリエイティブな方向を目指し、ちょうど中途採用を募集していた静岡県の浜松市にあるローランドに入社します。
モノを「ハード」その心を「ソフト」と表現して面接でアピールした大和氏は、「ソフト」違いで、いきなりMIDIシーケンサーのプログラミングを担当させられ、厚さ10cmぐらいの印刷物の束になったアセンブラのソースコードを渡されます。
その後の同氏は、「RSS(Roland Sound Space)」という3次元のサウンドプロセッサにかかわります。この装置は音声信号をソフトウェア的に処理して、音の3次元のエフェクトを再現するプロフェッショナル向けのサウンドエフェクターです。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.