「地域の人の誇りに」大田区の町工場から始まる町づくりおおたオープンファクトリーとは(前編)(1/4 ページ)

町工場を観光資源として考える理由やオープンファクトリーを開催するまでの経緯、関連する取り組みや将来像などを関係者に聞いた。

» 2015年11月27日 11時00分 公開
[加藤まどみMONOist]

 東京都大田区で2012年から継続的に開催される町工場の見学、体験イベント「おおたオープンファクトリー」。日本でも腕利きの職人たちがその技を存分に見せてくれるイベントだ。2015年は11月28日〜12月5日に開催される。メイン開催日は土曜日で、主な見学拠点は11月28日が東急多摩川線「下丸子」駅および「武蔵新田」駅周辺、12月5日が工場アパートのテクノWING、OTAテクノCORE、テクノFRONT森ヶ崎および京浜島・城南島(ツアー)となる。

おおたオープンファクトリー2014の様子:写真提供:大田クリエイティブタウン研究会

 このイベントでは地元の町工場、観光協会、そして大学が一体となって大田区の町工場の魅力を発信する。イベントの目的は、単なる観光や産業振興だけではないという。観光、モノづくり、町づくりが一体となったユニークな取り組みはどのようにして生まれたのか、関係者に話をうかがった。

 前編では観光協会および大学、後編では町工場からみた取り組みを中心に紹介する。

近年注目をあつめる「町工場めぐり」

 オープンファクトリーは、工場が集積した地域で特定の日に工場を開放して、見学や体験などを行うイベントだ。近年新しいタイプの観光として注目を集める産業観光の一種でもある。最も早くに始まったのが2011年の台東区南部地域における「台東モノマチ」だ。東京都では他に大田区のおおたオープンファクトリー、墨田区の「スミファ」、台東区浅草の「A-ROUND」などがある。また横浜市港北区や新潟県燕市・三条市など開催地域は全国に広がっている。

 町工場には、子どもや会社員、定年退職者や主婦など幅広い人たちが見学に来る。街歩きとしての魅力は、単なる健康志向や歴史散策とは一味違った視点を提供してくれることだろう。地域の住人が、地元にもかかわらず今まで知らずにきた近所の町工場の活動を知りたいと見に来ることも多いそうだ。また自分たちの使っている製品はどのようにして作られているのかという興味から参加する人もいる。さらに工場見学好きで、各地のオープンファクトリーを回っているという人もいるという。

町づくり、産業、観光を一体化した取り組み

 各地で開催されるオープンファクトリーの目的や運営主体はさまざまだ。目的は産業振興や観光、地域住民と工場の交流促進などを単独で掲げることが多い。主催者は企業団体や自治体など、地域によって異なる。

 一方、おおたオープンファクトリーの特徴は、町工場や観光協会、大学が一体となって実施していることだ。主催は大田オープンファクトリー実行委員会で、工和会協同組合、一般社団法人大田観光協会、首都大学東京、横浜国立大学からなる。事前準備や各種の企画は、「ねじまき隊」と呼ばれる大学生や大学院生、町工場の職人たち、大田区民などのボランティアを中心に行われている。

 おおたオープンファクトリーの開催されている地域の町工場の特徴は、部品の金属加工がメインであることだ。最終製品を作っているわけではないため、イベントを実施するにしても展示の切り口の設定や、来客との対話の糸口の作り方が難しいという。また中間製品を扱うため、一般消費者向けのイベントで製品を販売したり商談につながったりという直接的なメリットを得ることは難しい。また人数の少ない町工場では、休日にまで工場を開けることが難しい場合もある。大田区ではこういった特徴を考慮しつつ、観光、産業振興、地域振興が一体となった活動としてオープンファクトリーを作り上げてきた。

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