イベントには即効性も発信力もあり活動の有効な手段ではあるが、本来は継続的に活動していきたいとも野原氏はいう。そこで設立されたのが「くりらぼ多摩川」(クリエイティブタウンラボ多摩川の略)だ。
地域の活動拠点として2013年12月にオープンした。この建物は元工場と事務所空間を改築したもので、小さな町工場がひしめき合っている中にある。ここはオープンファクトリー開催時の拠点となる他、町工場の職人の話が聞ける「町工BAR」や工作教室などのイベントが継続的に行われている。
現在は毎日開いているわけではないが、いずれは大田区の地域の人が管理して日常的に住民や町工場の人たちが交流する場になることを目指している。「モノづくり産業を次世代に受け継ぎつつ、新たに地元と溶け合いながら発展していく」(野原氏)拠点になればという。
一方くりらぼ多摩川は「元町工場という不動産がどうあるべきかの解の1つ」(岡村氏)でもあるという。数の減少が進む町工場だが、建築物としてユニークなものも多く、野原氏は住工が一体となった大田の町工場を「工場町家」と名付けている。1階の間口が広かったりクレーンが付いていたりといった具合だ。大田区は交通の便がよく住みやすい街のため、何もしなければ工場は家やマンションになってしまう。それでは独自の魅力をもたない普通の町になってしまう。そこで元工場にクリエイターなどに住んでもらうのもよいだろうという。町工場と近いため専門的な加工のアドバイスをもらえるメリットもある。クリエイターや職人とのコミュニティーも形成できればという。
「工場が経営されなくなったらバッサリと止めるのではない。後に続く活動と重なり化学変化を起こしながら、新しい町の形へと進化していく手伝いができれば」と野原氏はいう。有機的につながるまちの形を見据えたこれらの活動が、今後どうなっていくのか注目したい(後編へ続く)。
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