マイコン大手のMicrochip Technology(マイクロチップ)が、ネットワークやインタフェースの制御ICを手掛けるStandard Microsystems(SMSC)を約9億3900万米ドルで買収する。この買収は、マイクロチップが車載分野に参入する足掛かりになるかもしれない。
マイコン大手のMicrochip Technology(マイクロチップ)は2012年5月2日(米国時間)、イーサネットやUSBなどのネットワークやインタフェースの制御ICを手掛けるStandard Microsystems(SMSC)を買収すると発表した。買収金額は約9億3900万米ドル(約751億円)。SMSCが保有する現金と資産価値の合計約1億7300万米ドル(約138億円)を除くと、約7億6600万ドル(約612億円)を投資したことになる。
SMSCの2012年度(2012年2月期)の売上高は4億1200万米ドル(約329億円)、営業利益は5510万米ドル(約44億円)だった。また、SMSCは約300件の特許を保有するとともに約100件の特許を出願中であり、マイクロチップはこれらの特許群を全て入手することになる。
SMSCは、PCや民生用機器で用いられるネットワークやインタフェースの制御ICの他に、2005年4月に買収したOASIS SiliconSystemsが展開していた、カーオーディオやカーナビゲーションシステムといった車載情報機器向けのLAN規格であるMOST(Media Oriented Systems Transport)制御用ICのベンダーとして知られている。MOSTは、欧州の自動車メーカーを中心に車載情報機器に広く採用されている。MOST制御用ICのほとんどをSMSCが供給していることもあり、同社は車載情報機器メーカーのみならず自動車メーカーとも緊密な関係を構築している。
またSMSCは、MOST制御用ICの他にも、車検などの際に用いる診断システム向けイーサネット制御用ICや、車載情報機器とスマートフォンやタブレットPCを接続するのに用いるUSB制御用ICも展開している。さらに、2010年2月に買収したKleer Semiconductorの非圧縮無線音声伝送技術「Kleer」も、車載情報機器向けで有力とされている。
EE Timesの報道によると、マイクロチップの社長兼CEOを務めるSteve Sanghi氏は、「SMSCの顧客が開発中の次世代車載情報機器向けに、マイクロチップのマイコンやアナログICを提案できるようになる」と述べている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.