矢崎総業がイノベーション拠点を公開、労働集約型モノづくりのスマート化に向けスマートファクトリー(1/3 ページ)

矢崎総業は、新たに開設したイノベーション施設「Innovation Hub - REN(錬)」(IH-REN)を報道陣に公開した。IH-RENでは、AI/ロボティクスを活用した次世代のモノづくりに向けて、自働化の検証や産学連携による研究開発を推進し、新たな価値の創出を目指す。

» 2026年07月22日 07時00分 公開
[朴尚洙MONOist]

 矢崎総業は2026年7月15日、同社の研究開発/管理拠点「Y-CITY」(静岡県裾野市)内に新たに開設したイノベーション施設「Innovation Hub - REN(錬)」(以下、IH-REN)を報道陣に公開した。IH-RENでは、AI(人工知能)/ロボティクスを活用した次世代のモノづくりに向けて、自働化の検証や産学連携による研究開発を推進し、新たな価値の創出を目指す。

矢崎総業の「Innovation Hub - REN(錬)」におけるヒューマノイド活用のデモ[クリックで再生]
矢崎総業の「Innovation Hub - REN(錬)」における3種類のAIビジョン技術を用いたロボットアームによるワイヤハーネス取り扱い作業のデモ[クリックで再生]

 IH-RENは、矢崎グループの研究開発機能や管理機能に加え、矢崎部品の裾野製作所などが集積する広さ5万坪(約16万5000m2)のY-CITY内に設けられたイノベーション施設である。敷地面積は1万2647m2、延べ床面積は3682m2で、IH-RENの活動に専任で携わる約80人の従業員と、開発プロジェクトごとに関わる矢崎グループやパートナーのメンバーがAI/ロボティクスを活用した次世代のモノづくり技術の開発に取り組んでいる。

「Innovation Hub - REN(錬)」の外観 「Innovation Hub - REN(錬)」の外観[クリックで拡大] 出所:矢崎総業
矢崎総業の齋藤崇人氏 矢崎総業の齋藤崇人氏

 IH-RENの活動を統括する矢崎総業 W/H生産管理室 イノベーションセンター長 兼 Y-TEXIA(旧鹿児島部品) 代表取締役社長の齋藤崇人氏は「私は、技術開発から始まり生産技術、製品企画、新規事業開発など川上から川下に向かって経験を積み、その中でAIやデジタルの最新技術も学んできた。2023年に鹿児島部品というワイヤハーネス製造の子会社に出向することになり、それらのAIやロボットの技術を持ち込み、活用できるとワクワクしていた。しかし、ワイヤハーネスの製造は労働集約型の典型であり、古き良き日本のモノづくりの縮図になっていることを実感した。もちろん、ワイヤハーネスのようなモノづくりも今後AI/ロボティクスによって変わっていくことは間違いない。ただし、鹿児島部品における3年間の経験で得たのが“人の強さ”だった。IH-RENでは、この人の強さと、AI/ロボティクスを融合した新しいモノづくりを目指したい」と語る。

 IH-RENでは、社内の開発/設計部門や生産部門、管理部門、子会社などの社内パートナーと社外パートナーとの連携を通して、「課題解決に向けて必要なBM(ビジネスマネジメント)」「フィジカルAIとロボティクスの融合」「デジタライゼーションによる間接コスト削減」「デジタル連携とアディティブマニュファクチャリング」という4つのプロセスを回してイノベーションを生み出していく。

IH-RENにおける社内外パートナーとの連携と、イノベーションを生み出す4つのプロセス IH-RENにおける社内外パートナーとの連携と、イノベーションを生み出す4つのプロセス[クリックで拡大] 出所:矢崎総業

 矢崎版スマートファクトリーの具現化に向けた、IH-RENにおける2026〜2030年のロードマップも策定している。大まかに「製品企画と工法革新の一体推進」「現場ニーズに即したソリューション開発/新技術検証」「管理間接人員/モノづくりリードタイム短縮に寄与するサービス提供」の3分野に分けた取り組みが既に始まっている。2026年に国内製造拠点のデジタライゼーションを確立、2027年にタスク/モーションのプランニング、2028年にVLM(視覚言語モデル)/マルチモーダルAI現場展開開始、2029年以降に製造データ生成AI活用/50%省人化などの目標達成も目指す。

IH-RENのロードマップ IH-RENのロードマップ[クリックで拡大] 出所:矢崎総業

 齋藤氏は「AI/ロボットが進化する一方で、人にしかできないこともたくさんある。IH-RENでは人とAIが共存する工場を目指す。確かにAIの進化は爆発的なものがあり、来るべき将来に向けてこの方向性が最適かどうかは分からない。分からない中で手探りになるかもしれないが、AIや最新技術を導入して目指すものを描きながら、これからの活動を進めたい」と述べる。

 なお、IH-RENでの開発プロジェクトは、EXITルールに基づき、終了や延期、継続を判断する。EXITの基準としては、最重要とする技術をはじめ、工程/リソース、スケジュール、ビジネス/戦略の4つを設定している。このEXITルールは、技術的めどが立たない中で開発が長期化し、開発工数を無駄に消費することを防ぐとともに、プロジェクト失敗からの学習を共有できるようにする狙いがある。

 また、戦略的ポートフォリオ運営に基づき、EXITルールによって発生した余剰リソースは新規プロジェクトにスライドして活用する。新規プロジェクトは、市場動向やベンチマーク、社内外のニーズに合わせて企画される。また、現在のIH-RENの開発プロジェクトはスマートファクトリーが対象になるなど製造関係に絞り込まれているが、将来的には生活環境や新事業などに領域を広げていきたい考えだ。

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