芝浦工業大学は、運転者の操縦意図を判別し、危険時のみ車体安定化制御を作動させる二輪車向け運転支援技術を開発した。これにより、自然な操作感と安全性の両立を目指す。
芝浦工業大学は2026年7月10日、運転者の運転意図をリアルタイムで推定し、必要な場合に限って車体安定化制御を作動させる「運転者意図認識型・状況適応安定化制御システム」を開発したと発表した。同システムは芝浦工業大学 システム理工学部 桑原央明准教授(実世界情報メカトロニクス研究室)と同学 大学院理工学研究科修士課程 塚瀬翔太氏による研究成果だ。
運転者意図認識型・状況適応安定化制御システムは、ハンドル操作と前輪操舵(そうだ)を電気的に制御するSBW(Steer-by-Wire)とAI(人工知能)機械学習を組み合わせたもの。運転者が意図的に旋回している状況と、転倒につながる不安定な状態を区別し、危険時のみ姿勢制御を介入させることで、安全性の向上と自然な操縦感覚の維持を目指す。この研究成果は、メカトロニクス分野の国際学術誌「IEEE/ASME Transactions on Mechatronics」に掲載された。
研究グループは、SBWを搭載した実験用電動バイクを開発した。SBWはハンドルと前輪を機械的に接続せず、電気信号によって操舵を行う仕組みである。この構成により、運転者がハンドルに加える力と、タイヤが路面から受ける反作用力を分離して取得できる。
運転者が加える力には「曲がりたい」「姿勢を維持したい」といった意図が反映される一方、路面反力には路面状況や車体挙動に関する情報が含まれる。同研究では両者を個別に扱うことで、運転者の意図と車両状態をより正確に把握できるようにした。
さらに、車速、操舵角、車体の傾斜角度、路面反力などのデータをLSTM(深層学習モデル)へ入力し、車両の状態を「直進」「旋回」「不安定状態」の3種類に分類するシステムを構築した。
システムが不安定状態と判断した場合のみ安定化制御を作動させる一方、旋回中と判断した場合は制御介入を行わない。そのため、運転者が意図して曲がろうとしている場面で車両制御が操作を妨げる従来の課題を軽減できるという。
実験では、カーブ走行と転倒につながる不安定状態を高い精度で識別し、必要なタイミングでのみ姿勢制御を作動させられることを確認した。また、運転者が加える力の情報を活用することで、操縦意図の推定精度も向上したとしている。
自動車分野では自動運転やADAS(先進運転支援システム)の導入が進んでいる。一方、二輪車は車体を傾けて旋回する特有の運動特性を持つため、運転者の意図と転倒リスクの判別が難しく、高度な運転支援技術の普及は限定的だった。
これまでの車体安定化制御は、車体が傾くと機械的に姿勢を戻そうとするため、運転者が意図して旋回している場合でも制御が介入し、操縦感覚を損なうことがあった。また、一般的な機械式ステアリングでは、運転者の操作力と路面反力が混在するため、運転意図を正確に推定することが難しかった。
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