なぜなら、左右2対のリンク構造では接地部は2点支持となり、構造物を安定して保持できない構造となり、ギクシャクした動きになっていたのです。
一般論として、物体を安定して支持するためには最低3点が必要です。これは、製図の幾何公差で使うデータムターゲット(面ではなく複数の点でデータムを構成する際の考え方)にも共通する事項です。
そこで、図5のように位相を少しずつずらした4対の足を配置すると少し安定した動きになります。
つまり、接地部の保持点数を増やせば増やすほど進行方向に対して左右と上下動作は小さくなるのです。
インターネットの動画サイトで見られるテオ・ヤンセンのストランド・ビースト機構の足の多さは、上記のような理由があるからなのです。
今回紹介した現物のおもちゃやアニメーションでは、支点位置や足の長さについて、最適化した数値で作ったものではありません。
テオ・ヤンセンのオフィシャルWebサイトを確認すると、コンピュータシミュレーションによって得られた最適なリンク長さの比率が示されていますので、実際に製作してみたい場合は下記URLを参考にするとよいでしょう。
関連リンク: | |
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⇒ | STRANDBEEST |
テオ・ヤンセンのストランド・ビースト機構の優れた点は、たった1つの動力で、さまざまなリンクを作用させて、動物が歩くような動きを実現させていることです。
筆者の持論ですが、最小限のアクチュエータを使って、メカリンク機構で複雑な動作をさせることこそが機械の信頼性を向上させる秘訣であると確信しています。
以上で、「メカメカリンクで設計しよう」の番外編は終わりです。リンク機構にかかわらず、設計作業には論理性が必要です。読者の皆さんにアドバイスするとすれば、「論理性を意識した設計を心掛ける!」ということに尽きます。
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