最終回は、多節リンクの解説。マジックハンドや譜面台など、皆さんもおなじみの面白いリンク機構が登場する。
今回は「メカメカリンクで設計しよう」の最終回です。四節リンクからさらにリンク数を増やす「多節リンク」の中から、ユニークな機構をピックアップして紹介します。
一般的なパンタグラフは、リンクを対向させたひし形レイアウト構造になっています。この平行定規(1)は、パンタグラフのリンクの組み合わせ方向を変更することで、平行レイアウト構造にしたものです。
条件によって異なりますが、多節リンクの特徴としては、1つのリンクに駆動力を与えれば、その他全てのリンクが追従して動くわけではありません。本例では全てのリンクを従動させるため、一番上の水平配置されたリンクを人の手などの操作によって上下駆動させることとします。
駆動リンクは真上に平行移動するのではなく、回転運動するリンクの回転軌跡に従って、横滑りしながらの平行移動となります。回転するリンクの支点部のフリクション(摩擦力)によって、上の図(gif動画)のように「回転するリンクの角度が全て一致しながら動作する」ことは一切期待できないことに注意しましょう。
この平行定規(1)の構造を応用したものに、折り畳み収納式の譜面台があります。
図1の構造を左右に配置することで、譜面台として使用する場合は広い面積を実現し、収納時は小さく折りたためる構造にできます。
No.47の構造で回転運動するリンクを平行ではなく逆向きに配置することで、水平配置されたリンクの横滑りを打ち消し、真上に移動できるようにしたものです。
特徴として、中間に水平配置されたリンク(水色)は、真っすぐ上下動するわけではなく横滑りしながら平行運動をします。まるで「お寺の鐘つき棒」のように飛び出していくその動作も利用できるでしょう。
回転する従動リンクの固定端の中間位置に、長穴を配置し、駆動ピンを上下にスライドさせると、左右の従動リンクは左右対称に完全同期して揺動させることができます。
長穴を中間位置から左右にずらせば、従動リンクの揺動角に左右差を与えることも可能です。
以下は、平行定規を応用した構造で、おもちゃでもよく見かける「マジックハンド」と呼ばれる構造です(図5)。
途中のクロスリンクの数を加減することで、ストロークを調整することが可能です。マジックハンドが格納状態にあるとき、それぞれのリンクや支点が干渉しないよう、「いかにコンパクトに設計できるか」が設計者の腕の見せどころとなります。
上の図5では、回転するリンクを駆動リンクとして動作させていますが、スライドピンに駆動を与えると、以下の図6のようになります。
スライドピン入力の場合、格納した状態から動かし始める際、摩擦によって機械効率が著しく悪くなるため大きな力を必要とし、アクチュエータの負荷オーバーに気を付けなければいけません。
そのため図5のような回転入力の方が、機械効率がよく、信頼性も高まります。加えて、圧縮ばねや引張ばねを用いて、スライドピンに荷重を補助的に加えれば、アクチュエータのさらなる負荷軽減につながります。
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