リンク機構を設計するときは、思案点で起こるイレギュラーな不具合もちゃんと考慮しよう。「多分、大丈夫……」は禁物!
前回までは、四節リンクの揺動運動に特化して、駆動リンクも従動リンクも1回転以上することなく動作するリンク機構を紹介しました。これらは駆動側に接続するアクチュエータは回転方向を正逆に切り替えながら断続的に動作しなければいけない構造でした。
今回から、四節リンクの回転運動を行う機構について紹介します。前回までの内容との違いは、「駆動リンクのみ、あるいは駆動リンクと従動リンクの両方が1回転以上連続して回転できる機構」という部分です。
これらの特徴は、アクチュエータを連続的に同一方向に回転させ続けることで、一定の動作を繰り返すことが可能なことです。センサーや停止させるための制御プログラムも不要です。例えばブラシモータを使用する場合では、モータを停止させる必要がないので、ブラシの摩耗が減り長寿命になり、機構が何らかの原因でオーバーランや暴走してもアクチュエータがロックすることがないので、機構が破損する心配がないというメリットもあるのです。
同じ長さを持つ駆動リンクと従動リンクが等間隔に平行に配置された場合、駆動リンクが1回転すると従動リンクも全く同じ動作をします。
図1のアニメーションを見ると、駆動リンクと従動リンクがともに1回転しており、「なるほどな〜」と思ってしまいますが、この機構を実現しようとすると意外と難しいことが分かります。なぜなら、互いのリンク板が相手の支点を遮るため、回転軸が貫通している中間位置でこの機構を実現させることは不可能だからです。
No.20の機構を実現するには、図2のように互いに片持ち構造として、相手の軸を分断しないよう回転軸が対向するレイアウトにしなければいけません。
No.21のリンク機構と同様の構造ですが、駆動リンクと従動リンクを相対的に短くした平行リンクです。駆動リンクが1回転すると従動リンクも全く同じ動作をします。
ただしNo.21の機構は、駆動リンクと従動リンクの長さを短くし、かつ支点位置を広げたため、No.20の機構ようにリンク板が相手の回転軸を分断する構造ではなくなりました。そのため、図2のレイアウトに加えて、今回の機構では図4のようなレイアウトも可能となり、設計自由度は少し広がることになります。
No.21に代表される等長リンクの平行クランク機構で有名な物に、蒸気機関車の車輪連結に使われているものがあります。
蒸気機関車は、変速ギアがなくシリンダーのクランクと車輪のクランクの比率が一定であるため、速度はシリンダのピストン運動の速度に依存する構造といえます。
蒸気機関車には、一般的に客車用に使われる「C型」と貨物用に使われる「D型」があります。C型とD型は動輪が3軸と4軸かという違いですが、機関車の出せる速度はクランク(上記写真では駆動リンクや従動リンクに相当)の長さに比例するため、車輪の直径が大きいC型のほうが車輪の直径が小さいD型より低トルク高速タイプになります。
* SL(エスエル)とは、Steam Locomotive の頭文字を取ったものです。
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