動作が終わったとき、コンパクトに格納したい! そんな機構を作るときのよいお手本が、航空機の車輪格納機構だ。
前回は、四節リンクの応用編として、リンクを組み合わせて特徴のある動作をするものを紹介しました。今回の事例は、四節リンクを使ってリンクをコンパクトに折りたたむ機構の参考となる航空機の車輪格納機構を紹介します。
リンクの一部をストッパに押し当てることで動作を拘束し、外力を受けるとリンク全体が拘束される機能を持ちます。また、駆動リンクを時計回り(CW)に駆動させると拘束が解けリンクが格納されます。
リンクの外部にストッパを設けることで剛性の高い構造になります。負荷が軽い場合は駆動リンクと中間リンクの間で板金を曲げるなどしてストッパが設計できますが、寸法バラツキによりリンクが拘束される位置精度が悪くなる可能性があります。
図1のアニメーションから、下記のことが分かります。
この機構では、思案点を通り越してから折りたたまれるため、思案点を通過するときに瞬間ですがタイヤが相対的に下側に伸びるスペースを必要とします。
思案点とは、リンク機構などにおいて隣接するリンク同士が一直線になり力がゼロとなる点をいいます。別名、死点(デッドポイント)とも呼ばれます。思案点では、リンクが拘束されないことで、駆動を与えても左右どちらにも動くことができるため、動作が分からないなどの不具合が生じます。
例えば、下図のようなリンク構造において、従動リンクと中間リンクが一直線上にレイアウトされています。この状態で駆動リンクを反時計回り(CCW)に回転させたとき、従動リンクはどのように動作するでしょうか?
思案点から動作を開始する場合、慣性力が期待できないため、上図のようにどちらにリンクが動作するのか判断できないのです。ただし、かなり高い確率で左側の図の下側に折れると考えられます。その理由は、従動リンクと中間リンクがCAD上では水平に配置されていますが、それぞれのリンクの支点である回転対偶には必ずガタを持っています。
このガタと重力により、従動リンクと中間リンクは必ずわずかに下方に垂れ下がるので、その状態で駆動リンクAを動作させると下側に折れるからです。
ところが、ガタと重力による垂れ下がりはあくまでも期待値であるため、100%動作を保証できるものではありません。もし、振動が加えられている状態で動作を始めた場合は、ますますその確率が下がってしまいます。
製品設計では、100%の動作保証をしなければいけないため、あらかじめ動作したい方にばねを掛ける、あるいはリンクの長さを長くして最初から動作したい方向にリンクを折り曲げる構造にすべきなのです。
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