自動車のワイパーが互いに干渉せずに動作するにはどうしたらいい? 今回は、回転運動をするクランク機構の応用例を解説。
前回は、四節リンクの回転運動を行う機構において、思案点を利用する機構の設計上の注意点について述べました。
今回は、回転運動を行うクランク機構を使った応用例を紹介します。
最初に身近な例として、自動車に用いられるワイパー機構を見てみましょう。
自動車のワイパーの駆動機構は、大別するとパラレル方式とオーバーラップ方式があります。
一般的な乗用車に採用されるワイパー機構です。
図1のアニメーションから、ワイパー駆動用のモータが連続的に一方向に回転し続けることで、ワイパーアームが往復運動することが分かります。
バスなどの大型車両に採用されるワイパー機構です。
図1に示したパラレル方式は、2つのワイパーが干渉しないため、同じ動作を実現できますが、図2のオーバーラップ方式は、2つのワイパーが重なるため、互いの支点位置をずらすか、図3に示すリンクの長さAとBの比を変更するなどして、互いのワイパーが干渉しないよう動作タイミングを調整する必要があります。
「四節リンクにおける中間リンクは単なる駆動側と従動側を接続するためのリンク」という概念を捨てれば、中間リンクに機能を持たせることができます。図4のアニメーションのように、テーブル上の荷物を横に押し出す機構として中間リンクに機能を持たせて利用することができます。
駆動側が一定速度で回転しているにもかかわらず、従動側の角速度が変化することを利用して、従動側の揺動運動において、往きはゆっくりと動作し帰りは素早く戻る、あるいはその逆の動作特性を得ることができます。
完全にメカ的な機構で、速度変化を実現できる大変便利な構造といえます。
図5のアニメーションから、駆動リンクが反時計回り(CCW)に回転すると、従動リンクも反時計回り(CCW)に回転することが分かります。このとき、従動リンクは反時計回りに回転するときにゆっくり動き、従動リンクが時計回り(CW)に戻るときに素早く動きます。
従動リンクが揺動する死点位置における駆動リンクの角度を比較すると、明らかにα1>α2になっており、往復動作によって速度差が発生することが分かるでしょう。
駆動リンクを逆転させた場合を、図7のアニメーションに示します。
図5とは逆に、従動リンクが反時計回り(CCW)に回転するときに素早く動き、従動リンクが時計回り(CW)に戻るときにゆっくりと動くことが分かります。
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