大都市ロンドンはというと、今週、一定の排ガス基準を満たさないクルマに通行料金を課すエリア「超低排出ゾーン(Ultra Low Emission Zone、ULEZ)」をロンドン全域に拡大しました。ロンドン中心部から、だいたい半径20kmくらいの範囲のようです。このエリアを走行する乗用車や二輪車、バン、ミニバスなどには1日12.5ポンド(約2300円)が課されます。
この措置は大気汚染の改善が目的であり、大気汚染に関連する疾病を減らすためだとしています。徴収した料金は、ロンドン郊外向けの高速バス路線や、公共交通ネットワークの改善に投資されます。ただ、全ての車両が1日2300円を支払うわけではありません。
NHKによると、2006年以前に登録されたガソリン車や、2015年以前に登録されたディーゼル車が基準に該当し、対象はロンドン市内で70万台に上るとしています。また、ロンドン市によれば、既にロンドン郊外で走行している10台のうち9台が基準を満たしていると言います。
しかし、大規模な抗議集会が開かれ、「光熱費や食費が上がっている中で通行料金は払えない」「規制が始まる日にクルマを手放すことにした」という声をNHKが報じています。基準を満たさない車両の所有者がクルマを手放す(Scrappage scheme)ための補助として1億6000万ポンド(約294億円)の予算が用意されており、リーズナブルに公共交通機関の年間パスを手に入れる選択肢もあります。四輪車で最大2000ポンド(約37万円)、二輪車で最大1000ポンド(約18万円)の“廃車費用”を申請できますが、買い替えには心もとないですね。
ロンドン中心部には1日15ポンド(約2700円)の渋滞料金(Congestion Charge)も以前から設定されています。特定のエリア内に住む人、EV(電気自動車)やFCV(燃料電池車)の所有者など渋滞料金が軽減される対象も定められていますが、「とにかく自家用車で移動しないでほしい」という強い意志を感じます。
渋滞料金を課しても渋滞が決して解消していないことを考えると、納得もいきませんね。TomTomの調査によれば、都市の中心部から半径5km以内のエリアがグローバルで最も渋滞しているのは英国のロンドンで、10kmの走行に36分以上を要したそうです(平均時速17km)。ラッシュアワーには平均速度が時速14kmまで低下したと指摘しています。
クルマを買い替えるか、郊外でも公共交通が便利な場所に引っ越すか、クルマが不要だけれど住宅コストの高い中心部に移るか、そういった選択を「迫られる」のは楽しいことではありません。
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