京セラはカメラとLiDARの光軸を一致させた「カメラLiDARフュージョンセンサ」と、1mm程度の極小物体までの距離計測を可能にした「AI測距カメラ」を発表した。
京セラは2024年11月11日、カメラとLiDAR(Light Detection and Ranging、ライダー)の光軸を一致させた「カメラLiDARフュージョンセンサ」と、1mm程度の極小物体までの距離計測を可能にした「AI測距カメラ」を発表した。カメラLiDARフュージョンセンサはバスや建設機械、船舶などの自動運転システム向け、AI(人工知能)測距カメラはロボットハンドと併用して小さな部品のピッキングなどに展開する。
カメラLiDARフュージョンセンサは、京セラ独自の光学設計を用いてカメラとLiDARを1つのセンサーとして統合。ローデータの時点で視差のない重畳を実現する。また、LiDARは「現在商用化が公表されている製品としては世界最高のレーザー照射密度を達成した」(京セラ)としており、長距離と高精度を両立した物体検知が可能になるという。2025年からサンプル提供を開始する。
2024年6月に発表された自動運転車の安全確保に関するガイドラインでは、車両の最低地上高よりも高さのある障害物や路上で倒れている人などを対象に、必要な検知範囲と衝突回避能力を確保することを求めている。ここでLiDARの最高垂直分解能が問われるという。京セラの開発品は、70m先で5cmのビーム径を実現するなど、高精度な高さ情報の出力が強みだとしている。
LiDARはレーザー光の照射密度を高めることで解像度が向上。距離が離れた場所にある小さな障害物も認識できる。複合機やプリンタなどの開発で培ってきたレーザースキャンユニットの技術を応用することで、0.045度の照射密度を実現した。これにより、100m先の30cmの落下物も検知できる。また、セラミックパッケージの製造や開発のノウハウを応用したMEMSミラーを採用することで、従来のMEMSミラーを上回る耐久性も確保した。
MEMSミラーから光学系、電気回路、ソフトウェアまで自社開発しているため、用途に合わせたカスタマイズにも対応する。
自動運転技術の高度化に向けて、モビリティに搭載するセンサーの1つとしてLiDARが期待されている。LiDARの特徴は物体までの距離やサイズを把握できる空間認識能力だが、対象物をより性格に識別するためにカメラなどと併用されることが多い。
LiDARはすでに一部の市販車が搭載した例もあり、LiDARとカメラのセンサーフュージョンは自動車業界の複数の企業が取り組む領域だ。これについて京セラ 研究開発本部 システム研究開発統括部 LiDARプロジェクト責任者の岡田浩希氏は「自動車メーカーなどが言うフュージョンでは、カメラとLiDARのそれぞれの物体認識の結果を照合して“ここに物体がある”と判断するので下流での処理だとわれわれは考えている。この方式でもLiDARとカメラの視差が課題になっている。われわれのフュージョンでは、カメラのRGBによる色の画素情報とLiDARの方向と距離の情報をローデータのピクセルレベルで一致させている」と違いを説明した。
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