リクルートが「管理職の採用動向」についての調査結果を発表した。管理職求人は増加傾向にあり、「IT通信業界」だけでなく「製造業」でも管理職求人の伸びが見られた。
リクルートは2023年7月19日、「管理職の採用動向」についての調査結果を発表した。同調査は、転職支援サービス「リクルートエージェント」のデータから管理職の採用動向をまとめたもので、HR統括編集長の藤井薫氏やコンサルタントの見解が示されている。
藤井氏によると、企業はここ数年、事業変革を推進するための中途採用を強化しており、管理職でも外部人材の登用が増加傾向にあるという。中途採用の背景を人事担当者に尋ねると、「特定層(若者や管理職層など)で人材が不足しているため」という回答が35.0%だった。
かつての日本企業は、管理職が他社に転職することは一般的ではなく難しいというイメージがあった。しかし、社会の変化や人手不足などから、注力事業だけでなく、新事業への転換に向けて、外部人材を管理職に登用する動きもある。
2016年度を1として管理職求人の推移を見ると、2022年度は3.67倍になっている。コロナ禍では新規の求人が落ち込んだが、管理職求人は減少しなかった。
業界別に管理職求人の推移を見ると、2016年度を1とした場合に2022年度で最も伸びているのはIT通信業界だった。次が深刻な人手不足を抱えている建設、不動産業界となった。
特筆すべきは、日本型雇用の傾向が強い製造分野の電気、電子、機械業界メーカーで、管理職求人が着実に伸びている。2022年度の電気、電子、機械業界メーカーの管理職求人の割合を職種別に見ると、事業拡大に関わる営業や、製造部門に直結する機械エンジニア(生産技術含む)、変化に対応するための人事、マーケティングなどの管理部門まで幅広く募集している。
製造業の管理職採用動向について、コンサルタントの中村圭吾氏は「製造業では部下を持たない管理職待遇で入社し、半年〜1年後に部下を持つポストに就くというケースも多いが、入社時から部下を持つ管理職ポジションでの転職も増加傾向だ」と話している。ここ数年は、大手企業でも外部からの管理職採用が拡大しており、組織変革につなげるために新しいスキルやノウハウを持つ人材を、役職を問わず外部から採用する動きが確実に広がっているという。
続いて、職種別に管理職求人の動向を見ると、SEの伸び率が顕著になっている。IT通信業界だけでなく、事業会社も含めて成長や組織拡大のために外部から管理職を求める企業が増加しているとみられる。
IT業界、SEでの管理職採用動向について、コンサルタントの丹野俊彦氏は「IT業界やSEの管理職求人が伸びている背景は、(デジタルトランスフォーメーションへの対応など)社会のニーズ拡大、市場の拡大が考えられる」と述べている。IT業界全体でエンジニアの採用が活発になっており、IT業界で成長中の企業では、プロジェクトをまとめながら数人の部下を管理して組織を維持し、顧客との折衝も可能な人材が求められているという。
また、IT経験は浅くても、マネジメント経験者で特定業界の業務ノウハウを持つ人が、SIerやコンサルティング企業で採用されるケースや事業会社がSEを積極的に採用しているケースを紹介している。
管理職での転職者数の推移は、管理職求人の伸び率に対しては低いが、全体では2016年を1とした場合に2022年は3.13倍になっている。転職者全体の2.08倍よりも高く、管理職の採用ニーズは今後も高まっていくと考えられる。
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