「正社員の採用予定がある」企業はコロナ禍以来の60%割れ、賃金格差で新卒採用難キャリアニュース(1/2 ページ)

帝国データバンクが「2025年度の雇用動向」調査の結果を発表した。正社員の「採用予定がある」と回答した企業は58.8%で、コロナ禍以来の60%割れとなった。企業からは賃金格差で新卒採用が難しいとの声もあった。

» 2025年04月03日 16時00分 公開
[MONOist]

 帝国データバンクは2025年3月25日、「2025年度の雇用動向(採用)」に関するアンケート調査結果を発表した。

 同調査は全国2万6815社を対象とし、1万835社から有効回答が寄せられた。

 はじめに、2025年度(2025年4月~2026年3月入社)の正社員の採用状況について尋ねると、「増加する」「変わらない」「減少する」を合わせて「採用予定がある」と考えている企業は、2024年2月の前回調査から2.7ポイント減少して58.8%だった。2年連続で前の年度を下回り、新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受けた2021年度の55.3%以来、4年ぶりに60%を下回っている。

 「採用予定がある」の内訳は、「増加する」が同2.0ポイント減少して21.7%、「変わらない」は同0.8ポイント減の28.4%、「減少する」は同0.1ポイント増の8.7%だった。「採用予定はない」は同1.5ポイント増の28.5%と2年連続で上昇している。

キャプション 正社員の雇用動向(採用)[クリックで拡大] 出所:帝国データバンク

 「採用予定がある」企業のコメントを見ると、「とにかく人材が不足している。採用後も退職者がいるため人員が安定しない」(建設、大企業)や、「増員が必要なことは常に起こっているが、多くの企業が同じように不足しており、この状況を解決することは非常に困難」(ソフト受託開発、中小企業)などが挙がっていた。

 「採用予定はない」企業からは、「賃上げの流れが加速する中、なかなか賃上げができず、新しい人材を入れたくても入れられない」(機械製造、小規模企業)や「人が欲しいが、雇えるほどの資金余力はない」(サービス、小規模企業)などの声があった。

 企業規模別に、正社員の「採用予定がある」割合を見ると、「大企業」は全体(58.8%)を大幅に上回る83.6%だった。「中小企業」は54.4%で、うち「小規模企業」は35.9%となっている。業界別では、2024年問題に直面している「運輸・倉庫」が66.2%で、最も高くなっている。

キャプション 正社員の「採用予定がある」割合(企業規模、業界別)[クリックで拡大] 出所:帝国データバンク

 次に、2025年度の正社員の採用状況を採用形態別に尋ねた。その結果、全体では「採用予定がある」の割合は、「新卒新入社員」が37.1%、「中途社員」が51.0%となった。

 「新卒新入社員」と「中途社員」それぞれの「採用予定がある」割合を企業規模別に見ると、「中小企業」は「新卒新入社員」が30.8%、「中途社員」は47.0%と、中途社員が16.2ポイント高かった。

キャプション 正社員の採用予定がある割合(新卒と中途) 出所:帝国データバンク

 企業からは「賃金が低い零細企業に新卒希望がある訳がない。人手不足の中、余力のある大企業が人材獲得競争を勝ち抜いているのが現状」(輸送用機械・器具製造、小規模企業)のように、大企業との賃金の格差拡大から、中小企業は新卒の採用が難しくなっていることがうかがえる。

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