スリーエム ジャパンは、日本の理系分野における女性比率の低さに注目した、パネルディスカッションイベントを開催した。女性が理系を選択するのを阻む要因になり得るアンコンシャスバイアスの存在などについて意見が交わされた。
スリーエム ジャパンは2023年6月29日、日本のSTEM(Science、Technology、Engineering、Mathematics)、理系分野で特に課題となっている女性比率の低さに注目した、パネルディスカッションイベントを開催した。
理系分野における女性比率の低さとは、「内閣府男女共同参画白書(令和4年版)」によると、専門分野別に見た大学などへの女性の入学者割合(国際比較)が、日本は自然科学系27%、工学系16%と、OECD諸国で最下位となっている。
同イベントでは、「STEM分野に女性比率向上がなぜ求められるのか」「女性の理系進出を促すには」をテーマとし、同社が実施した2つの調査結果を元に議論した。2つの調査とは、人々の科学に対する意識調査「State of Science Index(SOSI)2023年版」と、同社グループ社員の進路選択などに関する社内アンケートだ(同年6月実施)。
SOSIの調査結果では、「女性はSTEM分野でのまだ活用されていない労働力としての可能性を秘めている」に日本人の84%が同意した。前年と比べて4ポイント増加している。
また、同イベントでは、女性が理系を選択するのを阻む要因について、周囲や社会からの影響などに注目し、パネリストの体験談とともに探った。同社社内アンケートには、理系進路を選択した女性社員を対象に「(女性なのにすごいね、などの)アンコンシャスバイアスがかかった言葉をかけられた経験があるか」という質問があり、54%が「ある」と回答していた。
パネリストとしてイベントに登壇した、日本科学振興協会代表理事で東北大学名誉教授の原山優子氏は「親世代の価値観によるアドバイスなど、幼少期から周囲によって無意識に刷り込まれたアンコンシャスバイアスの存在が、理系への進路選択を阻む要因の1つになり得る」とコメントしている。
一方、同社の社内アンケートでは「理系進路を選択した社員でそれを身近な人(保護者や親戚)から反対されたことが無い」と回答した割合が、男性は99%、女性は93%だった。
原山氏は、理系選択を身近な人に反対されたことが無いという人が男女共に9割を超える、同社のアンケート結果について「社員の多くが自らを主体とした進路選択ができていることが分かる内容で面白い。多様性を重視する社風が、主体的に進路選択する人たちを引き付けているのだろう」と述べた。
続いて、SOSI調査の「STEMキャリアを目指す利点」を選ぶ質問を見ると、「キャリアアップができる」「給与が高い」などほぼ全ての項目で日本の回答はグローバル平均を下回っていた。グローバル平均を上回ったのは「STEMでのキャリアを目指すことに利点はない」で、日本の回答割合はグローバル平均の約2倍となっている(日本7%、グローバル平均13%)。
同じくSOSI調査の、「科学を擁護しようとする人々に最も影響を与えることができるのは誰か」を尋ねた結果は、日本のトップ3は、1位が「科学者」(66%)、2位が「企業」(49%)、3位が「メディア」(40%)だった。「企業」を選んだ人の割合は、グローバル平均(25%)の約2倍となっている。
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