「終わらぬ品質不正」に「どうなる国産先端半導体」、激動の2022年製造業製造マネジメント 年間ランキング2022(3/3 ページ)

» 2022年12月23日 07時00分 公開
[池谷翼MONOist]
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問われる「Made in Japan」のクオリティー

三菱電機の柵山正樹氏(2018年12月のJEITA会見の写真)

 第3位は「三菱電機の品質不正が3倍増の148件に、調査完了も2022年秋まで延期」でした。三菱電機は品質不正は2021年6月末に鉄道車両用空調装置の不適切検査が発覚して以来、芋づる式に問題が次々と見つかり、同社の企業体質に対して厳しい視線が注がれています。

 2022年10月に品質不正の調査を終了したと発表して最終報告書を提出しましたが、それによると国内22製作所の内、17製作所で197件の品質不適切行為が存在したようです。その中には三菱電機の前取締役会長である柵山正樹氏が関わった案件も存在しました。

 同社における品質不正問題の改革を担う品質改革推進本部は、今後の方針として「品質風土」「組織風土」「ガバナンス」の3つを軸とした改革を推進すると発表しました。また発表の中では不適切行為を生んだ原因についての分析がありましたが、興味深かったのが、エンジニアリングプロセスにおいて「やらなくてもいいことにリソースを使っていること」が遠因となったのではないか、という指摘です。

三菱電機が示した3つの改革[クリックして拡大] 出所:経済産業省

 例えば、三菱電機として標準の範囲内の設計においても、設計デザインレビューを新規製品開発と同等のフルプロセスで行っているなどの問題がありました。こうした本来不要、あるいは省略可能であったはずのプロセスを積み重ねたことが、従業員の限りあるリソースを圧迫し、不適切行為を誘発したのではないかと推察されます。リソース不足が品質不正につながるということは過去に別の事案でも指摘されており、「良くあるパターン」の1つなのかとも思います。

必要なリソース最適化を図る改革を[クリックして拡大] 出所:経済産業省

 品質不正の問題は、潜在的にはどのような企業のエンジニアリングチェーンでも生じ得る問題です。個人的には製造業全体で、こうした不正のニュースを他人ごとと捉えるのではなく、自社の品質管理体制を改めて徹底的に見直す機会と捉えてほしいと感じます。


 記事ランキングには入りませんでしたが、2022年は「小川製作所のスキマ時間にながめる経済データ」「製造業のための『カスタマーサクセス』入門」「サプライチェーンレジリエンスに向けて」「インダストリー5.0と製造業プラットフォーム戦略」「トヨタ式TQM×IoTによる品質保証強化」など多くの連載がスタートしました。特に「小川製作所のスキマ時間にながめる経済データ」は、普段触れない統計データを基に平易な言葉で経済を分析するという切り口から、数多くの方に読んでいただくことができました。

 筆者の担当するカーボンニュートラル関連で言えば、2023年は国内でも企業間でのCO2排出量のデータ交換に関する仕様や仕組みづくりの検証フェーズを超えて、社会実装の本格化に向けた動きが業界全体で進むでしょう。個社レベルでは太陽光発電や水素エネルギーなど再生可能エネルギーの導入が着実に進み、省エネ、創エネの動きも広がるはずです。人工光合成やDAC(直接空気回収装置)、ペロブスカイト太陽電池といった最先端の脱炭素技術の研究開発の進展や、社会実装に向けた取り組みにも注目したいと思います。


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