品質不正の連鎖は収束する気配を見せません。品質不正は一企業の問題で済むことでなく、産業全体の停滞を招く可能性も十分にあります。本連載では相次ぐ品質不正から見える課題とその処方箋について、事例を交えつつ全7回で解説します。
2017年から始まる品質に関わる不正の連鎖は収束する気配を見せません。企業の多くはサプライチェーンの一部を担っており、品質不正は一企業の問題で済むことではありません。産業全体の停滞を招く可能性も十分に考えられますので、早急な対応が望まれます。
本連載では、相次ぐ品質不正から見える課題とその処方箋について、リスクコンサルタントの立場から事例を交えつつ全7回で解説します。
はじめに品質不正を発生要因の観点から整理します。品質不正の発生要因は「外部要因」および「内部要因」に分類されます。さらに「内部要因」は「全社レベルの要因」および「プロセスレベルの要因」に分類できます。
外部要因で代表的なものには過度に高い品質要求、業界内の競争激化、仕入れ先の供給問題(供給停止、品質不良)などがあり、サプライチェーン自体が無理のある設計になっているケースも考えられます。例えば検査工程でエラーが出た場合に、サプライチェーンの構成上どうやっても顧客の要望の納期には間に合わないが納期遅延を起こせないため偽装をしてしまうというケースなどです。
「内部要因」における全社レベルの要因とは、製造に関わる部署のみに限定されない企業文化や社風、組織構造、事業計画、人事施策、その他全社的に適用されるルールや仕組みなどに関連したものです。具体的には売上至上主義、前例踏襲主義の企業文化、品質保証部門の独立性の欠如、国内の設備投資削減、内部通報制度の形骸化などが挙げられます。
ここで重要なのは品質不正の要因は設計、製造、品質保証といった直接的にモノづくりに携わる部署に関連するものだけでないことです。全社レベルのコンプライアンス、ガバナンスに起因するものもあり、第三者委員会報告書などにおいても不正の要因として全社レベルのものが多く挙げられています。
そして「内部要因」におけるプロセスレベルの要因とは、各部門もしくは部門間で行われている業務プロセスの整備、運用状況に関連したものです。具体的には不十分な受注前審査、デザインレビューの形骸化、品質保証部門の要員不足、改ざんを可能とする検査データ管理などが挙げられます。
品質管理プロセスについてはISO9001(品質マネジメントシステム、QMS)が多くの企業で採用されてきました。しかし昨今の品質不正では同規格を取得していても不正を起こしてしまった事例が散見されます。これはISO9001が意図的なデータ改ざんなどの不正を想定していないことが原因と考えられます。
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