2nm半導体の国産製造会社「Rapidus」始動、トヨタら8社が出資し5年で量産開始製造マネジメントニュース

経済産業省は2022年11月11日、次世代半導体の設計・製造基盤の確立に向けた取り組みとして、新しい研究開発組織「技術研究組合最先端半導体技術センター(LSTC)」の2022年内の立ち上げと、製造基盤確立に向けた研究開発プロジェクトの採択先を「Rapidus」に決めたことを発表した。

» 2022年11月14日 06時30分 公開
[三島一孝MONOist]

 経済産業省は2022年11月11日、次世代半導体の設計・製造基盤の確立に向けた取り組みとして、新しい研究開発組織「技術研究組合最先端半導体技術センター(LSTC)」の2022年内の立ち上げと、製造基盤確立に向けた研究開発プロジェクトの採択先を「Rapidus」に決めたことを発表した。

半導体産業復権へ研究開発と製造の体制を整備

 デジタル技術の発展に伴い、半導体の重要性が大きく高まる一方で、地政学的リスクから経済安全保障面での問題が指摘されている。一方で国内の半導体産業は1980年〜1990年代初頭にかけては世界のトップを走っていたが、2000年以降は凋落(ちょうらく)が続く状況だ。今後さらに自動運転車などが広がる他、AI(人工知能)があらゆる製品に組み込まれるようになる中で、半導体の重要性はますます高まり、これらの技術の主導権を持つことが求められるようになっている。こうした中で、経済産業省では半導体産業やデジタル産業を国家戦略として推進する「半導体・デジタル産業戦略」を取りまとめ、3つのステップでの復活に取り組んでいる。

 今回はこれらを具体的に推進する組織として、研究開発基盤と量産製造拠点についてそれぞれ担う組織を明確化した。

photo 次世代半導体プロジェクトの体制[クリックで拡大] 出所:経済産業省

 米国のNSTC(National Semiconductor Technology Center)の日本版として、研究開発プラットフォームの役割を担うのが「Leading-edge Semiconductor Technology Center(LSTC)」である。同研究組織は、2022年5月に合意した半導体協力基本原則に基づいた日米間での共同研究の実施を見据え、同年7月に設立を決定した新しい研究開発組織で、今回はその名称を正式決定した。

 理事長には、東京エレクトロンで会長や社長を務めた東哲郎氏、アカデミア代表としては、東京大学 教授で理化学研究所 理事長の五神真氏が就任する。物質・材料研究機構、理化学研究所、産業技術総合研究所、東北大学、筑波大学、東京大学、東京工業大学、高エネルギー加速器研究機構、Rapidusが参加し、立ち上げは2022年内を予定している。

photo 研究開発拠点LSTCの概要[クリックで拡大] 出所:経済産業省

2nmプロセスの量産を5年以内に開始

 そして、量産製造拠点として選定されたのがRapidusだ。Rapidusは次世代半導体の量産製造拠点を目指すため、国内トップの技術者が集結し、2022年8月に国内主要企業からの賛同を得て設立された新企業だ。代表取締役社長は、日立製作所で半導体を担当し、トレセンティテクノロジー 取締役社長やウエスタンデジタルジャパン プレジデント、ウエスタンデジタル シニアバイスプレジデントなどを歴任した小池淳義氏が就任する。また、取締役会長はLSTC理事長でもある東氏が就く。

 両者と12人の半導体産業関連技術者が、半導体産業の行く末を案じる中で勉強会などを通じて意気投合し、創業個人株主となって出資。さらにこれらの勉強会の中で生まれた戦略や思いなどに共感した、キオクシア、ソニーグループ、ソフトバンク、デンソー、トヨタ自動車、NEC、NTT、三菱UFJ銀行の8社が総額で73億円の出資を行い、設立につながった。ちなみに「Rapidus」の社名の由来は、「迅速(rapid)」を意味するラテン語で、スピードを重視する姿勢を示したという。

photophoto Rapidusの概要(左)と出資企業(右)[クリックで拡大] 出所:経済産業省

 この出資金と合わせて、政府の「ポスト5G基金事業における次世代半導体の研究開発プロジェクト」の中の700億円の補助を受け、次世代半導体の製造基盤確立に取り組む。具体的には、まず米国IBMなどと連携して2nm世代のロジック半導体の技術開発を行い、国内短TAT(Turn Around Time)パイロットラインの構築と、テストチップによる実証を行う。2022年度は、2nm世代の要素技術を獲得を進め、EUV露光機の導入に着手するとともに、短TAT生産システムに必要な装置、搬送システム、生産管理システムの仕様を策定し、パイロットラインの初期設計を実施する。これらの研究期間終了後は、その成果をもとに先端ロジックファウンドリとして事業化を進め、5年以内の2nmプロセス半導体の量産を行う計画だという。

 Rapidusは経営方針として以下の3つを挙げており、顧客やパートナーとの密な意見交換により、最終製品を意識した半導体製造プロセスづくりを進めていく。

  1. 新産業創出を顧客とともに推進する
  2. 設計、ウエハー工程、3Dパッケージまでを含めて世界一のサイクルタイム短縮サービスを開発し、提供する
  3. 世界最高水準の設計部隊、設備メーカー、材料メーカーと協調し、新たなビジネススキームを構築する

 ファウンドリーとしては台湾のTSMCなどを含め世界でも数多くの有力企業が既に存在しているが、Rapidusでは特に最先端プロセス3世代程度に絞ることで、差別化を進めていく方針だとしている。

photo 次世代半導体研究開発プロジェクトのスケジュール[クリックで拡大] 出所:経済産業省

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