IHIの不適切検査、背景は検査現場の「余裕のなさ」か製造マネジメントニュース(1/2 ページ)

IHIは2019年3月8日、東京都内で記者会見を開き、同社の民間航空機用エンジン整備事業における不適切検査について、現時点で判明している事案の概要と原因を説明した。

» 2019年03月11日 08時00分 公開
[松本貴志MONOist]

 IHIは2019年3月8日、東京都内で記者会見を開き、同社の民間航空機用エンジン整備事業における不適切検査について、現時点で判明している事案の概要と原因を説明した。

 過去2年間に検査を行った国土交通省認定エンジン21台および部品を対象として4万件の検査記録を調査したところ、2017年1月から累計で211件の不適切検査が確認された。また、13台のエンジンで不適切検査が行われていた。

 不適切検査の対象エンジンと部品を使用する航空会社は公表しなかったが、海外の航空会社が含まれていることを明らかにした。不適切検査の現場となった同社瑞穂工場(東京都瑞穂町)ではインターナショナル・エアロ・エンジンズのV2500、GE・アビエーションのCF34、プラット&ホイットニーのPW1100G-JMのMRO(メンテナンス、修理、オーバーホール)を担当している。

 今回発覚した不適切検査は2つの事象に分けられる。第1の事象では、認定資格が必要な検査工程で無資格者が作業を行っていた。第2の事象では、エンジンメーカーから規定された整備作業手順を逸脱し作業を行い、また作業日時を改ざんし記録していた。検査合否を入れ替えるなど検査結果自体の改ざんはなかったとし、対象となったエンジン本体や部品の飛行安全はメーカーから問題ないとの見解を受けているという。

 IHI 社長の満岡次郎氏は、同事案について「当社が長年に培ってきた品質担保の姿勢を揺るがしかねない極めて重大なもの」と語り、陳謝した。同社は2019年2月12日以降、自主的に同事業を業務停止しており、業務再開は「再発防止策の確実な実行が確認でき、国土交通省の指導の下検討する」(満岡氏)としている。

会見で説明を行う同社社長の満岡次郎氏

各事象の詳細

 IHIにおける民間航空機用エンジンの整備は、エンジン受け入れおよび分解、部品検査および修理、修理検査、エンジン組み立ておよび組み立て検査、エンジン運転試験、エンジン出荷といった順序で進行する。

民間航空機用エンジン整備における各工程(クリックで拡大)

 第1の事象は修理検査で発生した。FAA(連邦航空局)認定資格を持たない検査員が、FAA認定資格が必要な検査項目を実施し、認定資格を持つ検査員の印鑑を借用して検査成績書に押印していた。同事象は208件確認されたとする。

 会見では、ファンブレードの修繕と検査作業が事象の例として示された。同作業はファンブレードの研磨や潤滑膜の再塗布、支持パッド張替えといった作業項目があり、各項目で検査も同時に実施する。この各検査ではFAA認定資格検査員が実施していたが、修繕作業項目が全て完了後に実施する「外観検査」で無資格者が検査を行っていた。

無資格検査の概要(クリックで拡大)

 第2の事象はエンジン組み立てと組み立て検査の工程で発生した。同事象はコンプレッサーのローター組み立て作業などで行われた。同作業におけるエンジンメーカーが規定した正規の作業手順はローター組み立ての後、回転アンバランス調整を行い組み立て検査員による検査を実施する。その後、オイルシールを組み付けて再度組み立て検査を行う。

 これに対して同事象では、エンジンメーカーが規定した正規の作業手順を逸脱して、オイルシールを組み付けた後に回転アンバランス調整を行い、その後に組み立て検査を行っていた。同事象は現時点で3件が確認されている。同社が実施した聞き取り調査では、「より実際の稼働状態に近い状態で回転アンバランス調整をした方が良いと判断してやった。カイゼンのつもりだった」と話す関係者もいたとする。

正規手順を逸脱した修繕検査作業の概要(クリックで拡大)
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