同社では、これら不適切検査について「品質の担保を組織として徹底する姿勢が欠如していた」と総括している。事案の発生要因としては「航空エンジン整備の検査記録の公的重要性に関する意識の乏しさ」「検査職場という品質保証上重要な職場に対するマネージメント層の関与不足」「資格が必要な業務を伴う検査職場における実地教育(OJT)制度の不明瞭さ」があったとした。
一方で、LCC(ローコストキャリア)などエンジンに関する業務を一括で発注したい航空会社のニーズが高まっており、「エンジンの購入から整備までを1パッケージとして販売するビジネスが増えている」(満岡氏)とする。整備事業においても今後需要が増加されることが予想され、瑞穂工場を含む同社航空エンジン事業では人員増強策を進めていた。
しかし、人員増強策によって配属された経験の浅い検査員の教育に経験豊富なFAA認定資格を持つ検査員のリソースが配分され、結果として検査現場では余裕のない状況が発生していたという。瑞穂工場に在籍する154人の検査員のうち32人が無資格検査に関与したことが判明しており、外観検査をOJTの一環として経験の浅い検査員に実施させていた。
また、瑞穂工場では2017年に品質向上を目的として、検査結果の合否のみを記録する検査システムから検査結果の合否と測定数値を記録するシステムへ変更していた。同社は、この検査システムの変更により検査員の業務負荷が高まったことも不適切検査を引き起こした一因との見方を示した。
さらに、同社では2018年4月に瑞穂工場において無資格検査が発生しているという内部告発を受けていた。この内部告発を受けて同社では社内調査を実施したが、事案を発見できなかった。満岡氏は、内部告発を見過ごす結果となったことについて「調査内容が大変不適切だった。調査対象に品質保証部門が入っていなかった」と述べた。
不適切検査が発覚する契機は、2019年1月に行われた国土交通省東京航空局の立ち入り検査だった。立ち入り検査は「定期的に実施されるものではなく、国土交通省が任意のタイミングで行うもの」(同社広報)であり、国土交通省への同社従業員の告発有無については「分からない」としている。
同社では、国土交通省の調査に引き続き協力するとともに、社内調査を実施し再発防止策の具体的検討に入る方針だ。
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