第2位は「2nm半導体の国産製造会社『Rapidus』始動、トヨタら8社が出資し5年で量産開始」でした。Rapidusが2nmプロセス半導体の量産拠点として選定されたというニュースは、米国の「CHIPS法」を通じて設立予定の「NSTC(国立半導体技術センター)」の日本版として「LSTC(技術研究組合最先端半導体技術センター)」を立ち上げるという情報と共に、2022年11月に発表されたばかりです。にもかかわらず、2022年の年間ランキングで2番目に読まれた記事ということで、先端半導体の国産化の行方に大きな注目が集まっている様子が伺えます。
Rapidusは2022年8月に設立された新会社で、キオクシア、ソニーグループ、ソフトバンク、デンソー、トヨタ自動車、NEC、NTT、三菱UFJ銀行の8社が総額73億円の出資を行っています(「NTTは何を期待してRapidusに出資したか」)。設立からしばらくは2nm世代のロジック半導体製造に必要な要素技術や装置、各種システムの獲得に努め、その後5年以内に、先端ロジックファウンドリとして2nmプロセスの半導体製造を開始すると目標を掲げています。
Rapidusに関しては、その後もMONOistで幾つものニュースやコラムのテーマとして取り上げてきました。例えば、共同開発パートナーシップを通じてIBMがRapidusの国内製造拠点に2nmプロセスの製造技術を導入するとした「RapidusとIBMが2nm半導体の量産へ協力、日本の半導体産業に期待寄せる」や、ベルギーの半導体研究機関であるimecとの協力関係構築を目指すとする「2nm半導体の国産目指すRapidusとベルギーのimecが協業へ、覚書を締結」といったニュースがあります。国内に存在しない最先端ロジック半導体の製造技術をIBMやimecから取り入れて補うことなどで、日米欧など国内外組織間での協働を進め、半導体サプライチェーンのレジリエンス強化を官民一体で図っていく方針のようです。
また最近の記事では、「SEMICON Japan 2022」のオープニングキーノートなどをまとめた「なぜ日本で2nmの先端ロジック半導体を製造しなければならないのか」も多くの方に読まれました。衆議院議員自由民主党の甘利明氏は2nmのロジック半導体国産化を目指す背景として、台湾有事を念頭に置いた経済安全保障上の危機の高まりや、車載半導体など先端半導体への需要の高まりを挙げました。2021年には国の支援の下、台湾のファウンドリ大手TSMCが熊本県に工場を建設する計画が発表されました。かつて栄華を誇った日本の半導体産業の復興を目指した政府主導の動きが本格化しており、今後の展開にも注目が集まります。
しかし、残念ながらこうした「日本の半導体産業の復興」というシナリオにはネガティブな反応が少なくありません。特に国産の2nmロジック半導体の量産化を行うというプランに対しては、技術も装置もそれらを扱う人材も国内に不足していることから実現性が不透明だと問題視する声が多く出ています。
例えば、EE Times Japanの連載「湯之上隆のナノフォーカス」を執筆する湯之上隆氏は、Rapidusの試みを「もはや暴挙を通り越して笑うしかない」と評しています。MONOistでも、「国産2nmファウンドリーよりもインテルに来てもらう方が現実的な気がする」「「エルピーダは失敗ではない」問われる失敗の定義」などで、量産化の実現可能性や、かつて日の丸半導体復興を目指したエルピーダの「失敗」の価値などを冷静に論じるコラム記事を掲載しました。
とはいえ、一番良いのはこうしたネガティブな下馬評を、Rapidusが今後の活躍で全て吹き飛ばしてくれることです。最後に、問題点があれば指摘しつつ、日本の半導体産業の復興可能性を冷静に評価していきたいとメディアのスタンスを示した「日本が20年遅れた先端ロジック半導体、再建のカギは“大人の見る夢”」の記事を紹介しておきたいと思います。
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