まるで週1の連続ドラマのような感覚の記事、毎週水曜日をお楽しみに! 今期のメインテーマは「設計者が加工現場の目線で考える、 3DとIT活用の現実と理想のカタチ」。2018年9月のサブテーマは『3D化とIT化は本当に後継者育成の鍵になるのか」を考える』です。
まるで週1の連続ドラマのような感覚の記事、毎週水曜日をお楽しみに! 今期のメインテーマは「設計者が加工現場の目線で考える、 3DとIT活用の現実と理想のカタチ」。2018年9月のサブテーマは『3D化とIT化は本当に後継者育成の鍵になるのか」を考える』です。
前回まで、加工現場の3D化、IT化への取り組みの現状や、それにまつわる設計者と現場との意思疎通の問題点、3D化とIT化によってそれらを改善する術を探るなどなどを、設計者目線で述べてきました。
今回のサブテーマ「3D化とIT化は本当に後継者育成の鍵になるのか」では、近未来に視点を移して、今までの回とはちょっと違った趣で仕立ててみます。3D化とIT化によって変化した現場の様子をイメージしながら、「これからも生き続ける加工現場のカタチ」について(一部妄想も交えつつ)考えていきましょう。
製造業は国内経済の屋台骨ですから、日本から淘汰されることはまずありません(きっぱり!)。ですが、過去30年ほどの間には、為替の変動、海外への工場進出、アジア新興国の経済成長と生産力の急伸などなど、本当に多くの課題に直面してきましたし、今でもこの業界は競争と激変の中で、この先生きのこるための術を日々模索している最中です。しかもインターネットによる国際ネットワークが確立し、世界のどこにいても24時間いつでも設計や商談ができてしまう世の中になり、時の流れの加速度が増す今、現状の問題を解決するだめだけではなく、10年以上先の効果を見据えて計画して行動しなければいけません。
3Dプリンタの進撃を受けてか、このところの工作機械の進歩は著しくて、同時4軸、同時5軸による3D切削加工は当たり前になってきましたし、1チャックで6面体を加工できる同時6軸、同時7軸、果ては8軸という神業的な加工をこなす工作機械も続々登場しています。この背景として、かつての大量生産から多品種少量生産への移行と、それに合わせた段取りの省力化が求められる時代に突入していることがうかがえます。機械のこうした進歩に合わせてCAD/CAMも年々進歩していますし、数年前と比べて手が届きやすい価格帯で、なおかつ高機能のものが出てきています。こうして3D CADによる設計が浸透しつつあるのです。
もちろん、汎用工作機械もバリバリ活躍中ですが、設計環境の進歩に照らして考えると、ある程度足並みを合わせる意味で、「汎用工作機械の現場にも3D CADの導入をおすすめしたい」というお話を、前回のサブテーマでさせていただきました。これは、設計者と現場間に起きている現状の諸問題をクリアにするための3D CAD活用はもちろんですが、既に従来の大量生産が価値観の多様化に合わなくなっている今、この先、企業間連携や協業が活発化して、商品開発と生産の形態は小回りの利くものに変化していくだろうという、近未来を想定しての提案でもあります。つまり、ネットワークにつなぐための3D化とIT化に取り組んでおきたいのです。
中小でも零細でも、ほとんどの町工場は下請けで成り立っていて、どの町工場も、エンドユーザーの厳しい要求に応えながら培ってきた技術力は高いものです。しかし、常にエンドユーザーの業況に影響を受けてしまう不安定さから、どこでも一度は考えるのが「下請けからの脱却」です。しかし一社単独では、その発想力も行動力もまかなえないのが現実ですよね。
そこで、個々の町工場が得意技術を惜しまず提供し合い情報を共有し、連携や協業による商品開発と生産に、自社技術の活路を見いだす事例が少しずつ増えています。
3D化やIT化は環境として必要なものですが、連携や協業を成功させるためには、他社(者)を認めながら、自社が変化する勇気を持つことも大切なのですよね。
次回は「丁稚奉公と町工場連携のコミュニティー化」をお届けします。(次回へ続く)
藤崎 淳子(ふじさき じゅんこ)
長野県上伊那郡在住の設計者。工作機械販売商社、樹脂材料・加工品商社、プレス金型メーカー、基板実装メーカーなどの勤務経験を経てモノづくりの知識を深める。紆余曲折の末、2006年にMaterial工房テクノフレキスを開業。従業員は自分だけの“ひとりファブレス”を看板に、打ち合せ、設計、加工手配、組立、納品を1人でこなす。数ある加工手段の中で、特にフライス盤とマシニングセンタ加工の世界にドラマを感じており、もっと多くの人へ切削加工の魅力を伝えたいと考えている。
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