データを横から取得するといっても簡単なことではない。シュナイダーエレクトリックがこれらを開発できる前提としてあるのが、HMIで高シェアを握る「Pro-face」ブランドの技術力である。HMIに各種機器の情報を表示するためには、これらの情報を取得し、見やすい形に変換(ビジュアライズ)して表示する必要がある。つまり、HMIの開発では各機器の制御情報やフォーマットへの対応が必須となるため、主要な制御機器のフォーマットに既に対応し、情報を取得する技術を保有しているというわけである。
これらを背景としながらも開発には苦労があったという。石井氏は「工場内のエッジに近い領域のデータについては、接続して情報取得することが可能だったが、『Pro-face IoT Gateway』はHMIに表示するだけでなく、これをさらにクラウド経由で外部機器にも表示することを目指した。そうなると上位のさまざまな通信プロトコルやデータフォーマットなどにも対応していかなければならない。さらに上位層にもさまざまなベンダーが存在しており、これらに対応するようなソフトウェア開発が非常に大変だった」と苦労について述べている。
さらに、このようなデータ経路を迂回させて間の機器を通じて情報を取得する場合、迂回先の機器の故障や不具合で給電が止まるとその装置自体が機能しなくなるという課題があった。「こうした状況を嫌がって迂回機器の設置をしないというユーザーも多かった。そうした課題に対応するために、『Pro-face IoT Gateway』では給電が止まってもPLCとHMI間の通信は確保するという仕組みを採用した。この仕組みは特許出願中となっている」と石井氏は工夫について述べている。
価格についても10万円以内に収まることを目指した。石井氏は「スマートファクトリー化の流れにおいて、見える化は全ての入り口になる取り組みとなる。その最初の入口としてできる限りハードルを低くしたかった。いろいろ現場での情報活用が広がればさらに高度な取り組みをしたくなる。その過渡期をつなぐ製品だと考えている」と製品の位置付けについて述べている。
これらの取り組みが評価を受け、2017年の発売以降、自動車部品系や食品加工系などさまざまな業種の工場での導入が進んでいるという。シュナイダーエレクトリックのHMI製品では、エンドユーザーの工場に導入するケースと、製造機械メーカーに導入するケースの両方のケースが存在するが、「Pro-face IoT Gateway」については「エンドユーザーが多い。設備を実際に使う製造現場の方々が見える化をしたいということで導入するケースが大半だ。中小企業の比率も高い」と述べている。
今後に向けては「この製品はあくまでも工場の情報化に向けた過渡期を越えるための製品だと考えている。あまりこの製品単体で長生きさせるものではなく、より高度な分析などのソリューションと組み合わせて、高度化を進めていきたい」と石井氏は述べている。
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