ビル制御などでグローバルでは大きな実績を持つフランスのシュナイダーエレクトリックは約20年前から、現在のIoTに当たる取り組みを進めている。過去の取り組みに対し、現在のIoTは一体どのような点が異なり、どういう価値を新たに生むのだろうか。シュナイダーエレクトリックのエグゼクティブバイスプレジデント IoT&デジタルトランスフォーメーション担当のシェリル・ペルドカット氏に話を聞いた。
ドイツのインダストリー4.0や、米国のGEなどの取り組みなどから、製造業のIoT(Internet of Things、モノのインターネット)活用が加速している。大企業から中小企業までさまざまな企業による、成功事例の創出に向けた取り組みが過熱している。
こうした状況の一方で「20年前からIoTに取り組んできた」と語るのがフランスのSchneider Electric(シュナイダーエレクトリック)である。シュナイダーエレクトリックは日本ではUPS(無停電型電源)などデータセンター向けのソリューションで有名だが、グローバルではBEMS(ビルエネルギーマネジメントシステム)などを含めたビル向けのソリューションや、プロセスオートメーションなどの売上高が大半を占めている。
こうした実績を生かし、シュナイダーエレクトリックでは1990年代後半にインターネットを利用してIPベースで、オートメーション機器から情報を取得する製品を開発。「われわれには20年以上の歴史がある」と語る同社の「これまでのIoT」と「これからのIoT」について、エグゼクティブバイスプレジデント IoT&デジタルトランスフォーメーション担当のシェリル・ペルドカット(Cyril Perducat)氏に話を聞いた。
ITmedia産業5メディア総力特集「IoTがもたらす製造業の革新」のメイン企画として本連載「製造業×IoT キーマンインタビュー」を実施しています。キーマンたちがどのようにIoTを捉え、どのような取り組みを進めているかを示すことで、共通項や違いを示し、製造業への指針をあぶり出します。
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MONOist シュナイダーエレクトリックでは「IoTは決して新しいものではない」と話しています。ただ、現実的にはIoTによりさまざまな産業の変化が起ころうとしています。従来のIoTと今起こっているIoTにはどのような違いがあると考えますか。
ペルドカット氏 シュナイダーエレクトリックでは、基本的に「IoTは新しいものではない」と考えている。ドイツ連邦政府が進めている「インダストリー4.0」など、IoTによってもたらされる変化は「第4次産業革命」などとも呼ばれているが、シュナイダーエレクトリックでは「革命」ではなく「進化」だと捉えている。実際にシュナイダーエレクトリックでは1990年代後半には、インターネットを通じてプロセスオートメーションの危機を制御するような機器を開発していた。ただ、当時はあまり利用されることはなかった。そういう意味では現在の環境は、従来とは大きく異なっているといえる。
ペルドカット氏 違いとして大きいのが、周辺の技術の発展とコストの低減だ。従来は関連デバイスも高価でデータの蓄積先もオンプレミスであり、高機能なセンサーも高価な状況だった。結果としてユーザーには非常に高額なソリューションとなり受け入れられなかったという状況がある。しかし、現在は高機能なセンサーが小さく安くなり、オンプレミスに代わってクラウドなどの技術も出てきた。デバイスなども小さく安くなり、ようやく受け入れられるようになってきたといえる。
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