双腕型ロボットが自動でタオルをたたみサラダを盛り付ける、AI学習はVRシステム:2017国際ロボット展(2/2 ページ)
マルチモーダルAIロボットの特徴は3つある。1つ目は、実行したい作業内容について、VRシステムなどを用いたティーチングによってプログラミングすることなくディープラーニングによるアルゴリズムを得られることだ。2つ目は、カメラの画像や力覚センサーの情報を基に作業内容に関わる動作を時系列で覚えて再帰的に実行するRNN(リカレントニューラルネットワーク)をディープラーニングに用いていること。RNNの採用によって、作業内容を途中の段階からでも始めることができ、ティーチングも少ない回数で済ませられる。
そして3つ目は、ORiNやEtherCATといったオープンな規格の活用を基に、全ての構成要素を汎用品でまかなっているところだ。「ハードウェアもソフトウェアも新規に開発したものはない。また、このマルチモーダルAIロボットを組み上げて、今回のデモを実施できる段階まで3カ月程度しかかかっていないことも重要なポイントだ」(デンソーウェーブ ロボット事業部 製品企画室 室長の澤田洋祐氏)。
マルチモーダルAIロボットは多指ハンドによって不定形物を扱える。会見では、その特徴をアピールするため、タオルをたたむ、サラダを盛り付けるといった動作を自動で行うデモを披露した。タオルをたたむデモでは、一般的な機械学習で得たアルゴリズムでは難しい、作業途中の状態から作業を再開できることも示して見せた。
「マルチモーダルAIロボット」がタオルをたたむ様子(左)。このデモにおける「認知系処理」の状況。現在の状態(ライブビュー)だけでなく、アルゴリズムによって少し先の状態を予測した予測画像も出ている(右)(クリックで拡大)
「マルチモーダルAIロボット」がタオルをたたむ様子(クリックで再生)
「マルチモーダルAIロボット」によるサラダの盛り付け(左)と「認知系処理」の状況(右)(クリックで拡大)
この他、VRティーチングを行う際にVRシステムを装着した教師役の作業員の動きと、ロボットの動きが同期する様子も見せた。
VRティーチングを行う様子(クリックで拡大)
デンソーウェーブ社長の中川弘靖氏は「ディープラーニングでロボットを動かすという意味ではまだまだ第一歩にすぎないが、商品化に向けた出口戦略はしっかり検討していきたい。産業ロボット用途という形で前輪を回しつつ、医療や家庭向けなどにも展開できれば」と述べている。
「マルチモーダルAIロボット」の開発に参画したメンバー。後列の一番右側にいるのがデンソーウェーブ社長の中川弘靖氏(クリックで拡大)
- いまさら聞けない EtherCAT入門
産業用オープンネットワーク「EtherCAT(イーサキャット)」をご存じだろうか。工場などの産業用オートメーションにおいて、フィールドネットワークのオープン化が進む中、なぜEtherCATの存在感が増しているのか。誕生背景やメカニズム、活用シーンなどを詳しく解説し、その秘密に迫る。
- いまさら聞けない ORiN入門
スマートファクトリーやインダストリー4.0など「つながる工場」を実現するカギとも見られる、工場情報システム用ミドルウェア「ORiN(オライン)」をご存じだろうか。なぜ今ORiNが注目を集めているのか。誕生の背景や活用シーン、技術の概要などを紹介する。
- CEATEC 2017ロボットレポート(後編)――双腕ロボットが大活躍
CPS/IoTの総合展示会となった「CEATEC JAPAN 2017」では、数多くのロボットが展示されていた。後編では、大学や研究機関、通信キャリア、おもちゃメーカーなどのロボット関連のブース展示の様子を紹介する。
- ばら積みピックと双腕ロボは最強コンビ、 川重と三次元メディアがデモ
川重テクノロジーは「第28回 設計・製造ソリューション展(DMS2017)」に出展。川崎重工業の双腕ロボット「duAro」と三次元メディアのばら積み部品のピッキングを組み合わせ、基板組み立てを行うデモを披露した。
- 世界初の力触覚制御を実現した双腕ロボット、「固くて柔らかい」矛盾を解決
NEDOと慶應義塾大学は、身体感覚を伝送可能な双腕型ロボット「General Purpose Arm」の開発に成功した。「世界初」とする力触覚に応じた制御により、力加減を調節し多様な作業を柔軟に行えることが最大の特徴。「固くて柔らかい」という矛盾した制御が必要な力触覚はどのように実現されたのか。
- 産総研ベンチャーが双腕ロボで「ピペット奴隷」根絶を狙う
産総研発のロボットベンチャー、ロボティック・バイオロジー・インスティテュートが本格的な事業展開を開始する。「人間が使う実験道具をそのまま使えるロボット」で創薬事業の抜本的な改革を狙う。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.