コニカミノルタのヘルスケア事業は、X線や超音波を用いた医療診断機器が中心だ。ただし、コニカとミノルタそれぞれの「創業のDNA」(コニカミノルタ 社長兼CEOの山名昌衛氏)である材料、光学、画像の技術を基に開発したタンパク質高感度定量検出技術(HSTT)は、がん治療に関わるプレシジョンメディシンに有効とみられており、既に事業展開も始めている。
今回のAGの買収は、端緒についていたプレシジョンメディシンへの参入を本格化させるものだ。
AGの遺伝子診断技術を活用すると、患者にとって分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤が有効かどうかを判別することができる。これらの薬は極めて高価(年間で3000万円かかるといわれている)である以上、まずは有効かどうかを確認する必要がある。
しかし日本国内には、大規模遺伝子データ解析結果を踏まえた高精度の遺伝子診断サービスが存在していない。そこでコニカミノルタは、2018年度から、AGの技術を用いた遺伝子診断サービスを日本国内で始める計画である。乳がん、卵巣がん、大腸がんなどが診断対象となる。
そして、HSTTを使えば、がん細胞や免疫細胞の位置を正確に認識して適切な量の投薬を行えるようになる。つまり、AGの遺伝子診断技術とHSTTの組み合わせによって「プレシジョンメディシンに本格参入するための両輪がそろった」(コニカミノルタ 常務執行役 ヘルスケア事業本部長 藤井清孝氏)というわけだ。
また、患者の診断のみならず、製薬企業によるプレシジョンメディシンの創薬でも、AGの遺伝子診断技術とHSTTはシナジー効果が期待できるとしている。病院・患者向けの市場規模は2016年の27億米ドルから2026年には67億米ドル、製薬企業向けの市場規模は2016年の10億米ドルから2026年には34億米ドルまで伸びるとみている。
山名氏は「現在、コニカミノルタは、課題提起型デジタルカンパニーになりきると言っている。デジタルの活用による『マスから個へ』を推し進めており、それは医療におけるプレシジョンメディシンでもいえることだ。今回のAGの買収を踏まえ、これから10年、20年先を見据えながらプレシジョンメディシンを徹底的にやり遂げる覚悟だ」と強調する。
産業革新機構 社長兼COOの勝又幹英氏も「日本は、欧米や中国、韓国に対して、ゲノム医療をはじめとするプレシジョンメディシンで遅れているといわれている。官民ファンドである産業革新機構としては、今回のAG買収と他の投資案件をオープンイノベーションで連動させるなどして、日本の医療課題の解決につながるプレシジョンメディシンの推進に積極的に貢献していく」と述べている。
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