三菱電機とソニーの事例に学ぶ 品質不正防止につながる組織風土改革品質不正を防ぐ組織風土改革(6)(1/3 ページ)

繰り返される製造業の品質不正問題。解決の鍵は個人ではなく、「組織風土」の見直しにあります。本連載では品質不正を防ぐために、組織風土を変革することの重要性と具体的な施策をお伝えしていきます。

» 2025年05月16日 09時00分 公開

 最終回となる今回は、組織風土改革に取り組む2社の事例を紹介します。

 取り上げるのは、品質不正の発覚を契機に、再発防止策の一環として組織風土改革に取り組んでいる三菱電機と、パーパス(企業の存在意義)の浸透を軸とした組織づくりで注目を集めているソニーグループです。

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三菱電機の組織風土改革

 三菱電機は、品質不正の発覚を契機に、より第三者性の高い調査体制を整えるため、社外有識者で構成される調査委員会を設置しました。同委員会の調査によって、組織風土を含む不正発生の原因が指摘されました。これを受けて、同社は再発防止に向けた「3つの改革」を策定し、「品質風土改革」「組織風土改革」「ガバナンス改革」に取り組んでいます。

三菱電機が取り組む「3つの改革」について 図1 三菱電機が取り組む「3つの改革」について[クリックで拡大] 出所:三菱電機(https://www.mitsubishielectric.co.jp/reform/

 同社が組織風土改革で重視したのは、「経営層自らの変革」「管理職の行動変容」「コミュニケーションの活性化」です。経営層自らの変革に向けては、幹部へのコーチングや現場と目線をそろえるタウンミーティング、社内SNSを活用した経営層による情報発信などを継続的に実施しました。さらに、事業所や部門を越えたローテーションや1on1ミーティングなどを通じて、管理職の行動変容と部門横断的なコミュニケーションを促進していきました。

 加えて、心理的安全性の醸成にも注力。心理的安全性講演会の実施、心理的安全性/雑相(雑談および相談)ガイドラインの発行、「さん」付けの推奨など、多面的な施策の展開を進めてきました。

 こうした取り組みを通じて、同社は双方向のコミュニケーションを確立し、「上にモノが言える」「失敗を許容する」「課題解決に向けて皆で知恵を出し合える」といった風土の醸成を図っています。

 連載第4回第5回では、複数のコミュニケーションチャネル(図2)を活用し、「単発」ではなく「同時多発」で施策を設計することの重要性をお伝えしました。同社はまさに、この同時多発的な施策によって、コミュニケーションの活性化を図っているといえます。

「社内コミュニケーションチャネル」の種類 図2 「社内コミュニケーションチャネル」の種類[クリックで拡大]

 同社は組織風土改革に向けて、「私(me)から変わる、そして、三菱電機グループ(Mitsubishi Electric)を変える。自分ができること、三菱電機グループができることを、ひとつずつやっていきましょう!」と従業員に呼び掛け、「Changes for the Better start with ME」というスローガンを掲げています。

 連載第2回でお伝えしたように、近年の組織風土改革では、一人一人の従業員の行動を変えていく「行動変革型」のアプローチが重視されています。同社もまた、従業員の行動変革を起点とし、組織風土を変えていこうという姿勢を打ち出しているといえるでしょう。

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