コニカミノルタと産業革新機構は、高度な遺伝子診断技術を有する米国のアンブリー・ジェネティクス(AG)を約900億円で買収する。コニカミノルタは、自社のタンパク質高感度定量検出技術とAGの技術を組み合わせることで、プレシジョンメディシン(個別化医療)市場に本格参入する。
コニカミノルタと産業革新機構は2017年7月6日、東京都内で会見を開き、高度な遺伝子診断技術を有する米国のアンブリー・ジェネティクス(Ambry Genetics、以下AG)を共同で買収すると発表した。既に買収契約を締結しており、買収金額は8億米ドル(約906億円)だが、AGの今後2カ年度の決算数字に応じて、追加代金が2億米ドル(約226億円)発生する可能性がある。出資比率はコニカミノルタが60%、産業革新機構が40%。同年10月までに買収を完了する予定だ。
AGの現在の年間業績は売上高約316億円、営業利益約50億円。今後は、米国内にとどまっているAGの遺伝子診断サービスを日本を含めてグローバル展開を進めるとともに、コニカミノルタのヘルスケア事業とのシナジー効果を加えて、5年後の2021年度に売上高1000億円、営業利益200億円に伸ばすることを目標としている。
コニカミノルタと産業革新機構がAGを買収する背景には、需要が拡大しつつあるプレシジョンメディシン(個別化医療)市場の存在がある。プレシジョンメディシンとは、個々人の細胞における遺伝子発現やタンパク質などの特性を分子レベルで判別することで個々の患者を精密にグループ化(層別)し、最先端の技術を用いて適切な投薬、治療と予防を提供する医療のことだ。特にがんの診断や治療で、大きな効果を発揮すると期待されている。
がん治療に関わるプレシジョンメディシンとして注目を集めている、分子標的薬と免疫チェックポイント阻害剤の市場規模は、2017年の6兆円に対し、2021年には9兆円にまで拡大する見込みだ。
AGは、高度な遺伝子診断技術を持つとともに、遺伝子検査のコンサルティングなどを行う遺伝カウンセラー(GC)のチャネルでの圧倒的な強さを背景に、がん領域を中心とした米国の遺伝子検査市場におけるリーダー的存在になっている。1999年の創業で20年近い歴史があり、遺伝子診断に関するデータベースを蓄積していることも評価されている。
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