オムロン、障害の有無に関係なく働けるようにする「ゆにもの」技術特許を無償開放知財ニュース

オムロンは、オムロン太陽で発明した「ユニバーサルものづくり(以下、ゆにもの)」の技術に関する特許20点を無償開放すると発表した。

» 2025年05月16日 08時00分 公開
[MONOist]

 オムロンは2025年5月14日、オムロン太陽で発明した「ユニバーサルものづくり(以下、ゆにもの)」の技術に関する特許20点を無償開放すると発表した。

 オムロン太陽は、オムロンの創業者である立石一真氏と太陽の家の創設者である医学博士の中村裕氏により、1972年に福祉施設、身障者、民間企業の協力による日本初の福祉工場として誕生した。創業以来、生産現場において、個々のハンディキャップに適応した人材配置やさまざまな技術と全員による創意工夫で、障害のある人もない人も共に働きやすい環境をつくり、オムロンの主要製品である制御機器のリレー用ソケットや、サムロータリスイッチをはじめとする各種スイッチの生産などを行っている。

photo ゆにものの特許開放ポリシーを紹介したWebページ[クリックでWebページへ] 出所:オムロン

 「ゆにもの」は、オムロン太陽での活動の中で生み出された、障害の有無にかかわらず、誰もが最大限の能力を発揮して活躍できる職場づくりのことだ。モノづくりの現場で扱う治具、マニュアル、生産ラインの改善、障害者自身の自己成長の促進やサポート環境の整備などを行ってきた。ゆにものに関する技術は、従来は独自特許としてオムロン社内に蓄積してきたが、今回広く社会に公開することを決めたという。

 オムロンでは、オムロン太陽のWebサイトで公開されている「ゆにもの特許の開放ポリシーの受け入れ」を条件に特許の使用を許諾するという。

 無償開放される特許技術の1つとして「捺印(なついん)治具」がある。これは製品やワークにロット番号を捺印する際、従来の治具では位置ずれや押し方にばらつきが発生していたものを均一化するものだ。基台上に捺印対象物とインク台を固定し、作業者の回転操作で捺印部を対象物側とインク台側に回転往復させながら、押圧操作で捺印できる仕組みとし、ばらつきを抑え、安定した作業を可能とした。


photo 無償開放する特許技術の1つである「捺印治具」の写真[クリックで拡大] 出所:オムロン
photo 「捺印治具」の仕組み[クリックで拡大] 出所:オムロン

 その他の開放特許には、足腰に力が入りにくい人が椅子に手をついて立ち上がる際、椅子が回転してしまうと転倒する恐れがあったためにそれを補助する「ストッパー椅子」などもある。椅子から立ち上がる際にひじ掛けを押圧することで、その下向きの力を利用して座面の回転を止める座面ストッパー機構を搭載した。さらに連動して床面に水平な移動を止められる床面ストッパー機構も設けたことで、立ち上がる際に椅子の回転を止められるようにした。

photo 「ストッパー椅子」の仕組み[クリックで拡大] 出所:オムロン

 オムロンでは、ゆにもの特許の無償開放により、社会全体で障害の有無にかかわらず全ての人がイキイキと働ける職場作りを推進するとしている。

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