サイトリミックが実用化を目指すペプチドワクチンは、NECが山口大学、高知大学とともに肝がんを対象としたペプチドワクチンの共同研究で見いだした「HSP70」と呼ぶがん抗原タンパク質が対象となっている。840個のアミノ酸配列で構成されるHSP70から、各人の白血球型に適合するペプチドを見つけ出すには膨大な時間と手間がかかる。
NECはこの課題に対して、先述のアクティブラーニングとペプチド用機械学習を組み合わせた免疫機能予測技術を開発。実験済みパターンの結果を入力することで、未実験のパターン約5000億通りの中から、有望なパターン約200に絞り込んだ。そして、この免疫機能予測技術によって、従来は見つけられなかった、多くの白血球型に免疫の活性化を示すペプチドを発見できた。
このペプチドと、これとは別にGPC3と呼ぶ抗原タンパク質から得たペプチドによって、日本人の85%、欧米人の60%をカバーできるという。また肝がん以外にも、食道がんをはじめ他のがんにも効果を発揮する可能性がある。サイトリミックは、これらのペプチドに臨床試験で安全性と有効性が認められたアジュバントを混和し、皮下注射するタイプのペプチドワクチンの開発を目指す。
NECの清水氏は「サイトリミックの事業目標はペプチドワクチンの開発と実用化だが、その基になったAI技術はNECに残る。このAI技術も、ペプチドワクチンにとどまらず、さまざまな分野に展開していきたい」と述べている。
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