NECが人工知能関連事業を強化、人員を現在の倍にあたる1000人に拡大する。増員によってAI事業の適用範囲拡大を図り売り上げ2500億円を目指す。AI活用基盤として、脳型コンピュータの開発も進める。
NECが人工知能関連事業を強化、2020年をめどに研究開発を始めとした関連人員を現在の倍、1000人に拡大する。増員によって、画像解析を始めとした“見える化”を始め、機械学習などの分析、自律適応制御など制御・誘導の技術力を高め、適用範囲拡大や新分野創造を狙い、2015〜2020年度の累計売り上げ2500億円を目指す。
同社はカメラを始めとしたセンサーから得た情報を元に、「理解・認識」「予測・推論」「計画・最適化」などを行う人工知能技術の開発を1980年代から行っており、既に顔認証技術を利用した犯罪者の入国防止や振動解析技術を利用した橋梁検査、インバリアント分析技術を用いた故障予兆検知などのソリューションを提供している。
最近では2015年11月に「時空間データ横断プロファイリング」を発表している。これは複数箇所で撮影された映像データから、特定の不振行動をとる人物を特定する“認識と予測”による人工知能技術だ。これまでも顔認識を利用した同種技術は存在したが、照合数が膨大になった際に処理に要する時間が長大となる欠点が存在した。新技術では「顔の類似度」を元に特定人物を予測することで処理の高速化を図り、映像データから出現場所、時間、出現回数などをキーとした検索も行える。
また、こちらも同年11月に発表した「予測型意志決定最適化技術」は、従来は人間が行っていた「予測に基づいた大規模で高度な判断」をソフトウェアによって行うものだ。都市の配水計画や交通機関の運行計画、設備の保全計画など大規模インフラに用いることで、計画の最適化を支援する。
今までの人工知能とその役割は目的がハッキリしていることの支援、いわば効率化の推進だが、同社では大規模・複雑化する課題への取り組みとして、人工知能による「知性レベル支援」の実現を目指す。この「知性レベル支援」では収集したデータを元にした「仮設生成」と「仮説検証」を経て、人にアドバイスを与えるレベルの到達が目標となる。
ベースとなる要素技術と目される、テキストからの意味認識や音声認識・音声合成、RAPID機械学習、異種混合学習などは既に実用化が始まっており、同社執行役員 江村克己氏は「アプリケーション(事業)としてどのように具体化するかは別」と前置きしながらも、「技術的には完成の域に達している」と自信を見せる。
加えて同社ではソフトウェアである人工知能の研究と並行して、コンピューティング基盤の整理も進める。リアルタイム性を追求するため、人工知能実装を前提とした分散コンピューティングの開発を進める他、江村氏が「脳に倣う脳型コンピュータ」と表現する、超低消費電力動作の非ノイマン型コンピュータについても開発にも取り組む。
「脳に倣うコンピュータ」については既に大学など外部研究機関と検討を進めており、自社内ではなくオープンイノベーションで推進する。「半導体を自社で製造することはないが、外部の知見が必要な領域と認識している。ただ、デザインについては関与する必要があるだろう」(江村氏)。
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