人工知能やディープラーニングといった言葉が注目を集めていますが、それはITの世界だけにとどまるものではなく、製造業においても導入・検討されています。製造業にとって人工知能やディープラーニングがどのようなインパクトをもたらすか、解説します。
「人工知能」「ディープラーニング」というキーワードが注目を集めています。ディープラーニングは、ここ数年で人工知能を大きく躍進させるテクノロジーとして注目されるようになりましたが、特にここ1年の人工知能の躍進は目を見張るものがあります。
ディープラーニングの名を広めたIMAGENETチャレンジ(コンピュータビジョンによる画像認識コンテスト)ではMicrosoftとGoogleのグループによる人工知能が、とうとう人間の認識レベルを超える結果を達成しました。加えて、ディープラーニングは画像認識の分野だけではなく他の分野でも利用されています。
トヨタ自動車はディープラーニング用フレームワークを開発するPreferred Networkと協力し、2016年1月のCESで強化学習を利用した自動運転のデモを行いました(2017年のCES、主役は自動運転に替わって人工知能になる?)。またポップカルチャーにも影響を与え、Perfumeなどのデジタル演出を手掛けるRhizomatiks Researchがディープラーニングを作品作りに利用しています。
そして記憶に新しい、AlphaGoの歴史的な偉業です。あと10年は人間に太刀打ちできないだろうといわれていた囲碁の世界で、DeepMindの開発したAlphaGoが韓国のイ・セドル9段を破ったのです。
もはやディープラーニングは1つのアルゴリズムや、1つのフィールドだけで使われるものではなく、もっともっと大きな潮流となっているのです。
ディープラーニングは新しいコンピューティングモデルといえるものです。
従来の手法はそれぞれの分野の見識をもつ専門家(ドメインエキスパート)がそれぞれ違うソフトウェアをひとずつ書いて実現する、というものでした。一方、ディープラーニングはビッグデータと、それを入力して自ら学んでいくことのできる多層構造のニューラルネットワークを大規模に処理することで、より一般的な方法で多くのものに対応することが可能です。
Baiduは1つのニューラルネットで英語と中国語の音声認識を可能にしました。このように中国語のエキスパートと英語のエキスパートをそれぞれ必要とするのではなく、1人の言語エキスパートがいればいいのです。物体認識のアルゴリズムはAlphaGoでも使われ、それはアタリのゲームをプレイする時も同じ、1つの汎用的なアルゴリズムがさまざまな問題に対応するのです。
従来との違いは、それぞれの専門家が時間をかけてアルゴリズムをチューニングしていくのに対し、ディープラーニングではビッグデータと巨大なニューラルネットワークを処理可能な計算能力によってそれを実現していくところです。ソフトウェア開発に対する非常に大きな違いです。
この方法の大きなメリットを一目で理解していただけるのが、下のグラフです。青い点は従来型のコンピュータビジョンのアルゴリズムを専門家が時間をかけてチューニングをして、認識率を上げていったものに対し、緑の点はディープラーニングがビッグデータの学習をGPUのパワーを利用して実行して、人間を超える成果を出したことを表しています。
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